これまでにお会いした、いろんな方々とのエピソードをご紹介いたします。
平成元年、現在地の工場を建てるにあたって、ドイツを視察することに致しました。
丁度、貿易の規制緩和初期の頃にあたり、世界各国から私達が造る物より、美味しいものが輸入されるような可能性があるかどうかを知りたかったからでした。
高級惣菜店、市場、小規模の食肉加工場をいくつも見て歩きました。驚いた事に、どこの工場にいってもハムの漬け込みの際にはインジェクター(注入器)を使って、肉の中に漬け込み液や保存料等を注入していました。
それで『私のところでは、1920年代のドイツの製法(自然漬込、直火式燻煙、薪・炭火仕上)でハムを造っていますよ。』と、とある工場長に話をしました。
その工場長は大変驚いた様子で『日本では、今でもそういう造り方をしているのか。』と聞くので、 『そうしている所は非常に少ないと思う。 しかし、私のところでは今でも手間のかかる古いやり方でハムを造っていますよ。』と答えると、彼は私の目をじっと暫く見詰め、私が本当のことを言っているのを確かめると、片目をつぶって「ニヤリ」と笑い、『お前のほうが、ドイツらしい造り方をしているよ』と言いました。
ご承知のとおり、ドイツでは労働時間が平均週38時間、賃金も日本より高い場合が多いため、合理化が進み、手間や時間のかかる昔のやり方など、とても出来なくなっているとのことでした。
1990年頃、川崎のS百貨店での催事に出店した時のことです。
閉店5分前位に、女子高校生とその母親らしい方の二人が私達の店の前に立たれました。
試食をしていただきながら一生懸命にご説明したところ、お二人は閉店後20分過ぎまでいろいろ迷いながら、ハム1個を買ってくださいました。(当時のハムブロック1個は約400gもありました)
「少し無理にお勧めしすぎたかな」と反省しながら、後片付けをして帰りました。
次の朝のことです。開店と同時に昨夜のお二人が目の前に立たれているではありませんか。
『ああ,お客様からのクレ−ムに違いない。
「やっぱりいらないわ」と言われたらどうしよう』と思っているものですから、
最初に、つい口から出てしまった私の言葉は「何か不都合なことがございましたでしょうか」でした。
するとその方は,急にニコニコしてこう言われました。
「昨日のハムはこの娘が一人で食べてしまい、私と主人の分がありません。もう2個ください」・・・と。
この時ほど「ドキッ!」とした後、一日中嬉しかった日はありません。 お客様、ありがとうございました。
1986年、長年牧場自家用の為にだけ造ってきたハムやソーセージを、札幌グランドホテルの要請でいよいよ販売することになりました。
牧場の建物の一部を改装し、ハムソーセージ製造の為に必要最低限の設備を整えて、
所轄の保健所から営業許可の為の審査を受けることになりました。
保健所の担当課長と係長が来られたので、視察を終えてから、お茶とボロニアソーセージ10本を出しました。
二人で美味しそうに平らげてしまったので、すかさず「味は如何でした。許可をいただけますか」と聞きました。
すると、課長は空になった皿を見ながら「明後日にでも来てください。許可証を出しますから」と、
笑いながら言って帰られました。
一週間後、保健所に営業許可証を受け取りに行くと、なんと大きなダンボール1箱分のハム・ソーセージの注文を戴きました。
課長自ら職員の皆さんに宣伝し、注文を取りまとめて下さったのです。
それ以降、その課長さんが転勤後も管轄保健所職員さんから、お歳暮時期などに毎年必ず大量の注文を戴いています。
転任された課長さんは更に新しい赴任先にてまた宣伝くださって注文を取りまとめてくださるといった具合です。
食品業界の人に聞くと、まったく珍しいことだといわれます。
珍しいかどうかはともかく私たちにとって一番初めにご注文を戴き、今でも続いている大切なお客様が保健所なのです。
グルメの課長さん有難うございました。
営業許可をもらって最初のころ、札幌周辺のホテルやゴルフ場を回って営業をしていた時のことです。 ある調理長から「ホテルアルファ札幌の総調理長は、東京のホテルオ−クラから来られた。 味に厳しい優秀な味覚や技術を持った方で、他人の作ったものを褒めることはまず無い」と聞かされました。 それで早速、その調理長にアポイントをとってお会い致しました。 その調理長が私達の作ったレアチーズを、どう評価していただけるかを知りたかったからでした。 ひとくちレアチーズを口に入れたまま、調理長はしばらく黙っています。 待ちきれずに私のほうからお聞きしました。 「如何ですか・・・。」 すると調理長は、二くち目を口に入れて又黙ってしまいました。 仕方が無いので、再び「如何ですか。」とお聞きしました。 黙ったまま三くち目を口に入れた調理長は、やや暫くして、やっと口を開いてくれました。 「このレアチーズは、ホテルオークラでも出来ると思うけど・・・」と一呼吸置いてから「旨いね」と。 大変に嬉しかったので、今でもよく覚えています。調理長ありがとうございました。
1986年のお中元時期、初めて東京渋谷西武百貨店のギフトセンターで、商品の試食販売をしながらギフトのご注文を承りました。
デパートの担当の方もビックリするほど大変人気をいただき、御歳暮時期にも、ギフトの試食販売をすることになりました。そのときのお話です。
一人の熟年のご婦人が来られ、
「お中元の時には、大変に良いものを利用させていただき誠に有難うございました。」と御礼を言われました。
御利用戴いているお客様に、あまりにも丁寧なご挨拶を戴いたものですから、
私のほうがどぎまぎしながら
「とんでもございません。こちらのほうこそ本当に有難うございました。」とご挨拶しながらお話を承りました。
そのお客様のお話によると、ある大切な方のために、毎年ギフトシーズンにあちこちのデパートを回って、
喜んでいただけるものをと色々な食品のなかから真剣にお選びし、贈り物をお届けされてきたとのことでした。
「けれども先方から一度も御連絡を戴いたことがありません。
ところが、エーデルワイスの製品をお贈りした途端に、先方さまから『本当に美味しいものを、わざわざ北海道から送ってくれて有難う」
との言葉を戴きました。
「私にとってこれほど嬉しいことはございません。これからもよろしく。」とお話くださいました。
私どもにとっては大変嬉しいことではありましたが、ふと疑問も沸きました。
「グルメの時代と言われている今日、全国から美味しいものの集まっている東京で、このお客様の言われるように本当によいものが、なかなか見つからないことなどあるのだろうか?」と。
そこで、私自身もデパートを回って、色々なギフト食品を買い求め、実際に食べてみました。
そして、本当に美味しく飽きずに何度でも食べられる食品が少ないのに驚きました。
ご利用いただいている多くのお客様に伺っても、「心のこもったギフトとして利用できる食品が少ないのよね。」とおっしゃる方が多く、
また、始めて御利用くださったお客様の多くの方が、
「なかなか無いのよね。いつも探しているけれど…。」等と、おっしゃいます。この調査をきっかけに"徹底して素材と味にこだわった製品を作る、私達のやり方"に自信を持つことが出来ました。
今日があるのも、このお客様の出会いが大きかったと思います。
お客様、本当に有難うざいました。










