このフロンティアフェスタというイベントは、「北海道らしい風景の中で、北海道を代表する本当に美味しい食やお酒、音楽などを集めて仲間や友人たちと楽しめるようなイベントをしてみたい」という私を含めた3人の有志によってスタートしました。
一人は名うての地元の造り酒屋の跡取り、一人は大手ビール会社戦略本部長、そして私。
イベント運営などしたことも無い私を中心に組み立てようということで、全く知識ゼロからのスタートでした。
特に大手のビール会社と一緒に行うイベントということで、手法を間違えば、そのビール会社のイベントとなるため、それを感じさせないイベント運営も必要であることを心の隅に入れて、まずは調査を始めました。
手始めに、イベント業者数社に電話をかけてみました。どのくらいの運営資金が必要かということを訊ねると、不思議と相手から聞かれる内容がどこも一緒で、「何人集客したいのでしょうか?」というのです。
私:「3,000人位でしょうか」
業者:「なら、300万用意してください」
私:「仮に5000人なら」
業者:「そうなると、500万ですね。一万人なら1000万です。」というのです。
零細企業に、いきなりそんな額を用意しろと言われても無理。
ということで、資金集めをスタートすることに。
市役所、商工会及び商工会議所、観光協会、同友会などの自治体、次に銀行などを訪問。協賛してくれそうな企業も多数訪問。
「素敵な提案ですね。一度、上司に掛け合ってみましょう。」といってくれるので、大変期待して返事を待つも、一週間たっても返事がない。改めて、電話で連絡をすると大半がご不在。数日後、全て文章及び電話口にて「残念ながら、実績の無いところには・・・」と断られてしまいました。
そんな風に次々と断られていく最中、最後の最後と期待して訪問した先が市役所だったのですが、案の定、断られてしまうのですが、その直後、途方にくれて帰ろうとしている私に、市役所経済部係長のMさんという方がこういうのです。
「野崎さん 可能であれば、自治体などに頼らないで下さい。一度頼ってしまうと、どうしても、情やしがらみ等が出来てしまい、良いお店を集めたくても集まらなくなってしまう場合があります」と。しかし、彼の言うことはわかるけど全く資金が無い。。。
・・・数日後、イベントそのものの開催可否について、ビール会社の本部長に相談。
「多分、無理だ。そもそもが無理だったんだ。」と半ば諦めた気持ちで相談したところ、彼から意外な一言が。「まずはやってみて、皆でそれを割れば良いのではないか」という提案を受けました。
それではと、もう一軒の造り酒屋の跡取りの元へ。さきのビール会社本部長の言葉は全く伝えずに、彼の意見を聞いてみると、ほぼ同じような返答。
「まずはやってみましょう。資材はあるものを使えばいいんです。で出費したものを皆で割り勘」と。
そこで、各企業で所有しているイスやテーブルを持ち寄り、イベントに必要なものとして、トイレや警備、アルコールの入るイベントということで公共機関から当地にアクセスするためのシャトルバスなどは、直接企業にプレゼンして歩くことにしました。
中身が魅力的なイベントであれば、協力してくれるに違いないと信じて。幾つか訪問しているうちに、原価提供しても良いといってくれる企業が幾つか現れることに。本当にありがたい。
次に、消費者からみて、本当に魅力的な商品を生産されている方々を訪問して、説得して歩くことにしました。
「今まで無かったようなイベントで、誰もが憧れる本当に美味しい食やお酒を提供して、出店する側も楽しみながら、自らの作った商品のPRが出来る場を作ろう」と。ヨーロッパのマルシェのように活気がある素晴らしい場造りをしていきたいと。
不思議と私の熱意が通じたのか、出店する側は喜び勇んで参加してくれるところが多かったこと覚えております。
特に私たちが考えたのは、このイベントは消費者参加型の生産者応援イベントにしようということでした。
デパート物産展をはじめ、地方で行われている大きなイベントとなると、個人店が出店しようと思っても、出店費用が高く(例えば、札幌の一大イベントであるサッポロ○○○○フェスタなどは3週間開催で約100万程度かかる)や開催期日や開催時間の都合で出店しにくく、中々現実的ではありません。
そこで、幾つかの基準を設けました。
1.誰もが出店できるのではなく、実行委員会の名の下で審査する。本当に美味しいものだけを集めるには審査が必要。
2.出店が決まったお店は全力でPRする。特にマスコミやフードライターなどを呼び込み、出店後、様々な媒体で紹介頂ける様に働きかける。
4.イベントで利益を得ることを求めるのではなく、本業で実店舗誘導型のイベントとして、あくまでもPRの場として努めていただくことにする。
5.イベントでかかった経費はオープンにする。
6.出店費用は売上げの一部から。
ここも良いポイントがあって、魅力が無ければ、売上が落ちるので、必死になれる。
7.可能な限り、協賛金ではなく、協賛商品をもらうことに徹する。
(お金のにおいがするイベントは消費者側からは喜ばれない傾向にある)
ということで、魅力のある商品やサービスを提供しなければ、到底、集客も売上げも望めないけれど、それだけ真剣に取り組むことが出来ました。
また、イベント名も奇しくも北広島市はかのクラーク博士が名言を残した地ということもあり、それにちなんで「フロンティア精神を忘れずに」ということもあり、「フロンティアフェスタ」とビール会社本部長の提案を初期参加者全員一致で決めたのでした。
2012年の5回目開催まで、私ども企業が毎年100万程度の赤字負担をしていたものの、3年ほど前から出店者の売上げ費用にて運営拠出が可能となりました。
お陰様で、自治体や経済団体などの金銭的支援を一切受けず、民間の民間によるイベント運営を行っている先駆的事例として、船井総研をはじめ、北海道内の金融機関などから視察依頼を頂き、本年も無事開催に至る事が出来ました。
お客様応援型のイベント。ソーシャル時代のまさに理想的イベントとして、今年も一万人ものお客様を迎え、大成功に終えた事、ご報告申し上げます。
本当にありがとうございました。