ベーコン節の裏話 ― 手作業でしか作れない“唯一無二の節”
エーデルワイスファームが手がける「ベーコン節」。鰹節のように削って使う“肉の節”として注目を集めていますが、その製造の裏には、誰も知らない手仕事の物語があります。
機械化を目指したスタート
商品化を進める中で、最初に課題となったのは「瓶詰め作業」でした。削ったベーコン節を自動で瓶に詰めるため、私たちは効率化を目的に自動充填機の導入を検討しました。鰹節と同様にスムーズに進むはずでした。
しかし、実際に試作を始めてみると、思わぬ問題が発生しました。削りたてのベーコン節が、充填機の内部で詰まり、スムーズに流れなかったのです。
鰹節との違い ― “脂”がもたらす粘着
原因は、鰹節にはない「脂肪分」でした。ベーコン節は豚肉を原料としているため、わずかに残る脂が削り全体に影響します。削った瞬間、微細な脂が表面ににじみ出て空気中の水分と反応し、瓶に詰める前の段階でダマになりやすいのです。
鰹節のようにサラサラと流れることを想定していた私たちは、この性質に大きく悩まされました。摩擦や静電気の影響で、わずかな脂でも削り同士がくっついてしまう。その結果、自動充填機では詰まりが頻発してしまったのです。
手作業に戻る決断
試行錯誤を重ねましたが、自動化は断念。現在はすべての封入を職人の手で行っています。一瓶ずつ削りの状態を確かめ、固まりができないように少しずつ丁寧に瓶へ詰めていく。静電気を防ぐために湿度を管理し、専用の道具を使いながら、職人たちが手仕事で仕上げます。
効率化の面では決して有利ではありませんが、この手作業こそが「品質を守る最後の工程」であり、ベーコン節の個性そのものです。
“手詰め”がもたらす価値
ベーコン節は、1ヶ月以上の氷温熟成、さらに3〜4ヶ月間のドライエイジング(乾燥熟成)を経て完成します。原料の重量は最終的に約1/5にまで凝縮され、まさに旨味の結晶。その貴重な削りを一瓶ずつ丁寧に詰めていくことで、削りのふんわり感や香り、見た目の美しさを保つことができるのです。
機械化が進む時代に、非効率とも思える作業をあえて残す。それはクラフトマンシップの象徴であり、エーデルワイスファームが大切にしてきた「本物の味づくり」を体現しています。
少しだけ高価な理由
「なぜ少し高いの?」と聞かれることがあります。確かに、効率的に作ることを優先すれば、もう少し安くできるかもしれません。ですが、私たちにとっての価格は、単なる数字ではなく、人の手と時間、そして技術の積み重ねの証です。
機械では詰められないからこそ、人の手が必要。だからこそ、香りが生き、削りが軽やかに舞い、開けた瞬間に感動が生まれます。ベーコン節が少しだけ高価なのは、その“ひと瓶ひと瓶に人の手が宿っている”からなのです。
効率よりも品質を。量よりも、想いを。 この小さな瓶には、職人の誇りと時間が詰まっています。
ベーコン節の裏話。 それは、手間を惜しまない姿勢と、クラフトマンシップが生んだ小さな奇跡の物語です。
