ダイヤモンド賞を受賞したベーコンは、約4週間の氷温熟成と、薪と炭による直火の温燻から生まれます。
ダイヤモンド味覚賞は、国際味覚審査機構(International Taste Institute/ITI)が、10年間で3ツ星を7回受賞した製品に授与する賞です。
2026年6月、当ファームのベーコンがこの賞をいただきました。

ただ、この受賞は平坦な道のりの先にあったものではありません。
1986年の商品化から、2026年で40年になります。
その間には、まったく売れなかった時期がありました。
また、会社が続くかどうかという場面も何度かありました。

それゆえに、今回の受賞は、お客様とバイヤーの皆様、職人、そして家族に支えられていただいた賞だと受け止めています。
この記事では、ダイヤモンド賞とはどんな賞なのかを整理します。
あわせて、40年を支えた製法と、知られざる苦労の軌跡をお届けします。

ダイヤモンド賞を受賞したベーコンに授与された国際味覚審査機構の認定マーク
国際味覚審査機構(ITI)から授与された認定マーク。
SUMMARY
1 10年間で3ツ星を7回受賞した製品に贈られます
2 審査は銘柄を伏せたブラインド方式で行われます
3 塩せきはマイナス2℃で約4週間かけます
4 燻製はオーク材の薪と炭による直火の温燻です
5 保存料不使用のため冷凍で約2ヶ月が目安です

ダイヤモンド賞とは|ベーコンはどう評価されたのか

ダイヤモンド味覚賞(Diamond Taste Award)は、国際味覚審査機構(ITI)のプレステージ賞のひとつです。10年間で3ツ星を7回受賞した製品に授与されます。

まず、ITIは2005年から食品と飲料の官能評価を行っています。
審査員は、著名な料理コンペティションなどで実績のあるシェフとソムリエです。
その人数は250名を超えます。

評価は目隠し方式で行われます。
つまり、審査員はパッケージも製造者名も見ません。
そのうえで、第一印象・見た目・匂い・味・食感といった観点から採点します。
総合評価90〜100%を得た製品が、3ツ星と判定されます。

RATING 70〜80% ★★ 80〜90% ★★★ 90〜100% ダイヤモンド 味覚賞 10年間で 3ツ星を7回 目隠し方式の審査。総合評価70%以上で星が付きます。
※評価の段階をわかりやすくした模式図です。

プレステージ賞は3種類あります

ITIには、単年の受賞とは別に「プレステージ賞」という枠があります。
数年にわたって品質を保った製品を表彰する仕組みです。
ダイヤモンド味覚賞は、そのうちの一つにあたります。

← 表は横にスクロールできます →
賞の名称 授与の条件
クリスタル味覚賞 3年連続で3ツ星を獲得した製品
ダイヤモンド味覚賞 10年間で3ツ星を7回受賞した製品
アブソルート味覚賞 25年間で3ツ星を20回受賞した製品
※出典:International Taste Institute「優秀味覚賞」ページ。当ファームが受賞したのはダイヤモンド味覚賞です。
IN SHORT
ひとことで言うと、「名前を隠して食べてもらい、10年のうち7回も最高評価がついた」という賞です。ブランド名ではなく、味そのものへの評価にあたります。

受賞を支えた、極貧と試行錯誤の創業期

私たちのベーコンは、1920年代のドイツ文献に記された伝統的な考え方と、1960年代に二代目が確立した氷温熟成を土台にしています。ただし、製品化の初期は困難の連続でした。

そもそもの出発点は、「家族で自然の生活を楽しみながら、本当においしいものを作って食べる暮らしをしたい」という祖父母の牧場生活でした。
1933年には、ハム・ベーコンづくりが本格化します。
そして1960年代、父が凍るか凍らないかの温度で長期熟成させる方法にたどり着きました。

1985年、札幌グランドホテルの料理長から製品化の依頼を受けます。
翌1986年に商品化しました。
けれども、そのモノづくりは想像を絶する困難の連続でした。
なぜなら、機械による自動化が通用しない世界だからです。

口座が凍結した日々

商品化を依頼された当時、理想の味を追い求める父や母は、毎日山のような試作品を廃棄し続けていました。
その一方で、タイミング悪く祖父が亡くなったことで遺産相続問題が発生します。
結果として、銀行口座が完全に凍結されてしまったのです。

当時はお米をまとめて買うお金さえありませんでした。
米屋へ週に数回、その日に食べる分だけを必死に買い付けに行っていたそうです。
そのなかでも、肉や香辛料の支払いを優先していたと、後になって両親から知らされました。

そんな極貧のどん底にあっても、私たちは伝統の牙城を崩しませんでした。
肉の心地よい弾力とジューシーさを残すため、長期熟成と温燻(=比較的高めの温度帯で燻煙する方法)にこだわり続けたのです。
2年間じっくり自然乾燥させたオーク材をくべ、煙の前に立ち続けた両親の努力があったからこそ、今の味が完成しました。

「店じまい」の危機を救った西武渋谷店との出会い

1986年の危機を救ったのは、西武百貨店渋谷店のバイヤーからの出店オファーでした。1987年の開店から1993年春の閉店まで、夏冬の産直ギフトで5回連続の売上1位をいただきました。

西武百貨店渋谷店の産直ギフトで販売していた当時のハム・ベーコン
西武百貨店渋谷店に出店していた当時の様子。

命がけで完成させた熟成ベーコンでしたが、製品化のあとも厳しい現実が待ち受けていました。
1986年当時は、世の中全体が「質よりも量」を求める時代だったのです。
道内の百貨店催事に足を運んでも、「美味しいけれど、いいお値段ね」と言われる日々が続きました。

「もう数ヶ月売れ行きが変わらないなら、早々に店じまいをしよう……」。
半ば諦めかけていたある日、転機が訪れます。
当時、日本一の発信力を持っていた西武百貨店渋谷店のバイヤーの目に、私たちの製品が留まったのです。
「とても良い商品なので、ギフトシーズン中の催事に出店しませんか」と声をかけてくださいました。

産直ギフトで5回連続の1位

私たちは藁にもすがる思いで、北海道から渋谷へと向かいました。
すると、ハム・ベーコンは渋谷の地で飛ぶように売れました。
渋谷区を軸に、新宿、目黒、世田谷エリアのお客様にも広がっていきます。

1987年の開店から1993年春の閉店まで、アンテナショップは続きました。
その間、夏冬の産直ギフトで5回連続の売上1位という実績を残せました。
あの時、価値を認めてくださったバイヤーの存在、そして「これは本物だ」と並んでくださったお客様がいたからこそ、今の私たちは存在しています。

OUR HISTORY 1933 製造の本格化 1960s 氷温熟成の確立 1986 商品化・苦難の船出 1987-93 西武渋谷店で5回連続1位 2026 ダイヤモンド賞 1986年の商品化から、2026年で40年になります。
※主な出来事を抜き出した模式図です。

ダイヤモンド賞ベーコンの製法|約4週間と薪炭直火

私たちは塩漬液に肉を浸す方式で、マイナス2℃の氷温帯で約4週間かけて塩せきします。インジェクション(注入)とタンブリングは行いません。

まず、塩せき(=肉を塩漬けにする工程)には時間をかけます。
針で塩漬液を注入すれば工程は短縮できます。
けれども、私たちはその方法を採りません。
そのぶん、原料肉10kgから完成するのは約6kgになります。

PROCESS 原料肉 10kg 塩せき -2℃/約4週間 温燻 薪と炭の直火 完成 約6kg 量を増やすのではなく、時間をかけて仕上げます。
※工程の流れをわかりやすくした模式図です。
ダイヤモンド賞ベーコンの温燻工程で職人が直火を管理している炎の様子
職人が直火を管理している炎の様子。

職人が火を見る温燻

燻製には、2年間自然乾燥させたオーク(楢)材の薪と炭を使います。
方式は直火の温燻です。
職人が肉の状態を見ながら、火力を細かく調整します。
そのため、強い煙だけを付ける方法ではありません。

なお、塩せきの方式には注入式・乾塩式・湿塩式があります。
それぞれの違いは別の記事で詳しく解説しています。
ただし、味の感じ方には個人差があります。

ベーコンの製法を比較|注入式・乾塩式・湿塩式の違いを見る

OUR METHOD

量を増やすのではなく、時間をかけます。

約4週間
氷温帯での塩せき
-2℃
熟成温度
10→約6kg
原料肉から完成まで
2年乾燥
オーク材の薪

塩漬液を注入せず、タンブリングも行いません。数値はロットにより多少前後します。

添加物への考え方|「無添加」とは表現しません

「無添加だから安全」とは限りません。亜硝酸塩は現代に生まれたものではなく、ヨーロッパで古くから使われてきた岩塩に由来する技術です。私たちは必要最小限だけ使用しています。

食品の安全性は、添加物の有無だけでは決まりません。
加熱、温度、塩分、包装、衛生管理まで含めた設計で支えられます。
そのため、私たちは安易に無添加を掲げません。
亜硝酸塩を使わない製品を否定するわけでもありません。

食品安全委員会の資料によれば、ヨーロッパでは昔から岩塩を使ってハムやソーセージが作られてきました。
岩塩には硝酸塩が含まれることがあります。
おいしそうな色になり、風味が良くなり、食中毒が起きにくくなることを、昔の人は経験から知っていました。
その仕組みが解明された現在は、品質の安定した亜硝酸塩が食品添加物として使われています。

IN SHORT
ひとことで言うと、新しく生まれた物質を足しているのではなく、岩塩が担っていた働きを、量を管理できる形に置き換えたものです。ただし「自然界にあるから安全」という説明はしません。大切なのは目的と量です。

「塩せき」に馴染みがないのは、食肉文化が約150年だから

日本では、塩せきや亜硝酸塩という言葉に馴染みが薄いかもしれません。
その背景には、食肉文化の長さがあります。
日本で肉食が解禁されたのは、明治4年(1871年)のことです。
つまり、日常の食卓に肉が並ぶようになって、まだ150年ほどしか経っていません。

MEAT IN JAPAN 675年 肉食を控える詔 1871年 肉食の解禁 1874年 ハム製造の始まり 1877年 牛鍋屋が488軒に 675年の詔から、およそ1200年にわたり肉食が公に控えられました。 1874年のハム製造は、鎌倉で始まったとされています。
※主な出来事を抜き出した模式図です。

もっとも、まったく食べていなかったわけではありません。
猪や鹿を「薬食い」と呼んで口にする習慣がありました。
長崎などの例外もあります。
あくまで、日常の食卓に肉が並ぶ文化ではなかった、ということです。

食肉加工は、専門の職人がするものでした

加えて、日本では食肉加工が専門の職人の手にゆだねられてきました。
一方、ヨーロッパでは地域の肉屋が加工を担い、家庭でもハムやソーセージを仕込む文化が根づいています。
本場でハム用の塩が家庭向けに売られているのも、その延長線上にあります。
この違いが、用語への馴染みの差として残っているのかもしれません。

なお、当ファームは保存料・着色料・リン酸塩(保水剤)を使用していません。
ただし、それをもって「完全無添加」とは表現しません。
亜硝酸塩の役割と安全性については、専門の記事で詳しく解説しています。

無添加ハムなら安全?亜硝酸塩の誤解とボツリヌス菌のリスクを見る

おいしさを保つ保存方法|冷凍で約2ヶ月

保存料を使用していないため、冷蔵での日持ちは長くありません。届いたら、すぐに召し上がる分を除いて冷凍保存をおすすめします。未開封で約2ヶ月が目安です。

HOW TO KEEP 数日で食べる 冷蔵のまま 表示の期限内に 少しずつ楽しむ 小分けにして冷凍 使う分だけ解凍 贈り物にする 未開封で冷凍 約2ヶ月が目安 保存の目安は商品ごとに異なります。実際の期限は商品表示を優先してください。
※選び方をわかりやすくした模式図です。

冷凍しても、オーク材の香りや肉の品質が大きく損なわれることはありません。
そのため、長期間にわたっておいしくお楽しみいただけます。
解凍は冷蔵庫でゆっくり行ってください。

厚くカットしたダイヤモンド賞ベーコンをフライパンで焼いている様子
厚くカットしたベーコンをフライパンで焼いている様子。
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用語集

この記事に出てきた専門用語をまとめました。あわせてご確認ください。

← 表は横にスクロールできます →
用語 意味
塩せき 肉を塩漬けにする工程。液体を使う場合、その液を「塩漬液」と呼びます。
氷温熟成 凍る直前の温度帯で寝かせる方法。当ファームはマイナス2℃で約4週間です。
温燻 一般に30〜80℃程度で数時間かけて燻煙する方法。冷燻や熱燻とは区別されます。
インジェクション 針で塩漬液を肉の内部へ注入する方式。当ファームでは行いません。
亜硝酸塩 食品衛生法に基づき指定された食品添加物。ヨーロッパの岩塩に含まれる硝酸塩に由来する働きを担います。
タンブリング 回転する装置で肉を動かし、塩漬液をなじませる方法。当ファームでは行いません。
ダイヤモンド味覚賞 国際味覚審査機構(ITI)のプレステージ賞。10年間で3ツ星を7回受賞した製品に授与されます。
※温燻の温度帯は資料により幅があります。工程条件は製造者ごとに異なります。

ダイヤモンド賞ベーコンに関するよくある質問

受賞の内容、製法、保存方法について、いただくことの多い質問をまとめました。

ダイヤモンド賞のベーコンはどこで買えますか?

公式オンラインショップからお取り寄せいただけます。
また、北広島の直売店でもお求めいただけます。
百貨店の物産展に出店する場合もあります。

ダイヤモンド賞とはどんな賞ですか?

国際味覚審査機構(ITI)のプレステージ賞のひとつです。
10年間で3ツ星を7回受賞した製品に授与されます。
審査は目隠し方式で行われ、審査員は銘柄も製造者名も知りません。

市販のベーコンと何が違いますか?

塩せきにかける時間と、燻製の方法が異なります。
当ファームはマイナス2℃で約4週間かけます。
そのうえで、オーク材の薪と炭による直火の温燻で仕上げます。
ただし、味の感じ方には個人差があります。

保存料不使用とのことですが、どう保存すれば長持ちしますか?

小分けにして冷凍保存していただくのがおすすめです。
未開封であれば約2ヶ月が目安になります。
解凍は冷蔵庫でゆっくり行ってください。

エーデルワイスファームのベーコンは無添加ですか?

完全無添加ではありません。
亜硝酸塩を必要最小限だけ使用しています。
一方で、保存料・着色料・リン酸塩は使用していません。
実際の配合は商品表示を優先してください。

冷凍すると風味は落ちませんか?

大きく損なわれることはありません。
オーク材の香りや肉の状態は、冷凍でも保たれやすいためです。
むしろ、冷蔵で置くよりも品質を保ちやすくなります。

ギフトに使えますか?

ギフトとしてもご利用いただけます。
かつて西武百貨店渋谷店の産直ギフトで5回連続の売上1位をいただきました。
冷凍便でお届けするため、受け取り日時のご指定をおすすめします。

まとめ|ダイヤモンド賞ベーコンは、みんなでいただいた賞

ダイヤモンド賞は、40年のあいだ支えてくださった皆様と一緒にいただいた賞だと受け止めています。

お米すら買えなかった日がありました。
店じまいを考えた時期もありました。
そのたびに、手を差し伸べてくださる方がいました。

これからも、時間を短縮せずに作り続けます。
そして、心から「美味しい」と喜んでいただける製品をお届けします。
ぜひ、ご家庭の食卓でお確かめください。

WHO MADE THIS

エーデルワイスファームは、北海道北広島市で薪・炭火仕上げのハム、ベーコン、ベーコン節®を製造しています。

ドイツの伝統的なハムとベーコンを、家族が自分たちで食べるために作り始めて約90年になります。1985年に一人のシェフから「店で出したい」と請われ、1986年に製品として売り始めました。沿革を見る

マイナス2℃

氷温帯で約4週間かけて熟成

10kg → 約6kg

原料肉から減る分だけ、味が凝縮します

二年乾燥のオーク

薪と炭の直火・温燻。火加減は職人が見ます

塩漬液に浸して塩せきします。短時間で仕上げるインジェクション(注入)もタンブリングも行いません。手間はかかりますが、この工程を省くと肉の食感が変わります。製法を見る

EVALUATION

1 ITIダイヤモンド賞(最高位)
2 優秀味覚賞 三ツ星 7年連続(2020〜2026)
3 DLG(ドイツ農業協会)金賞
4 1997年から2026年までに、テレビ・新聞・雑誌・ラジオで104件(うちテレビ42件)

受賞実績を見る / メディア掲載104件を見る

私たちは「完全無添加」とは表現しません。ボツリヌス菌を防ぐため、亜硝酸塩を必要最小限だけ使用し、保存料・着色料・リン酸塩は使用していません。詳しくはこちら

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参考資料・出典