NOTE

大切なのは、表示だけで安全性を判断しないことです。それぞれの製品がどう安全と品質を支えているかを知っていただきたいのです。

「大切な家族には、少しでも体にやさしいものを選びたい」

その思いから、「無添加」「無塩せき」の表示を重視する方も多いはずです。
けれども、無添加ハムだから安全とは言い切れません。
家族の健康を願う気持ちは、とても自然で大切なものです。

しかし、食品の安全性は添加物の有無だけでは決まりません。
使用目的や使用量、加熱、塩分、温度も関わります。
さらに、衛生管理や包装、保存方法も無視できません。
製品がどのように作られ、管理されているかを含めて考える必要があります。

無添加ハムは安全なのか|この記事の要点

SUMMARY
1 亜硝酸塩は、発色のためだけの添加物ではありません
2 ボツリヌス菌の抑制など、複数の役割を担っています
3 使わない製品も、別の管理によって安全に作れます
4 当ファームは必要最小限を使い、保存料と着色料は不使用です

ハムやベーコンに使われる亜硝酸塩も、肉を赤く見せるためだけの添加物ではありません。
ハム特有の風味を生み、脂質の酸化を抑えます。
さらに、ボツリヌス菌などの増殖も抑制します。
食肉加工において、重要な役割を担っています。

当ファームも、無添加や無塩せきを初めから否定してきたわけではありません。
約40年にわたり、亜硝酸塩を使わない製法を試してきました。
また、セロリパウダーなどの植物由来原料も検討しました。
それでも、同じ香りと味わい、保存性を安定して実現するには課題が残りました。

この記事では、公的機関や欧州の評価と、私たち自身の試作経験を分けて示します。
そのうえで、なぜ現在も亜硝酸塩を必要最小限使用しているのかをお伝えします。

亜硝酸塩は現代に突然生まれたものではない

ヨーロッパでは、硝酸塩を含む岩塩が古くから食肉の塩せきに使われてきました。
昔の人々は化学的な仕組みを知りませんでした。
それでも、使う塩で肉の色や風味が変わることは経験的に知られていました。

「亜硝酸塩は、現代の化学が突然つくった異物」と思われることがあります。
しかし、硝酸塩や亜硝酸塩という物質自体は自然界にも存在します。
土壌や水、植物にも含まれています。

食品安全委員会の資料にも記述があります。
ヨーロッパでは昔から岩塩でハムやソーセージが作られてきました。

岩塩の硝酸塩は、肉の中で何に変わるのか

岩塩を使うと、肉がおいしそうな色に仕上がります。
また、独特の風味も生まれます。
そして、食中毒も起こりにくくなります。
昔の人々は、これを経験から知っていました。

岩塩の中には、硝酸塩が含まれることがあります。
それが微生物の働きなどによって亜硝酸塩へ変化します。
この反応が、食肉の色や風味をつくります。

現在は、成分量が一定しない天然の岩塩だけに頼りません。
品質と使用量を管理しやすい亜硝酸塩を使います。
法令に基づく食品添加物として指定されています。

ヨーロッパの食肉加工で古くから使われてきた岩塩を表現したAIイメージ
岩塩と古い食肉加工を表現したAIによるイメージです。実際の歴史資料や製造風景ではありません。

ここで大切なのは、「自然界にも存在するから安全」と結論づけないことです。
亜硝酸塩を安全に使う根拠は、天然由来かどうかではありません。
使用目的が明確であり、量が管理されていることにあります。

RELATED

そもそもベーコンとはどんな食品か、原料と製法の基本は「ベーコンとは?原料・製法・ハムとの違いを解説」でまとめています。

亜硝酸塩がハムに使われる4つの理由

亜硝酸塩は、肉を赤くするためだけの添加物ではありません。
塩せき肉特有の風味を生み、脂質の酸化を抑えます。
さらに、ボツリヌス菌などの増殖も抑制します。
ハムやベーコンの安全性と品質を支える技術です。

食品表示上、亜硝酸ナトリウムは「発色剤」と表示されます。
そのため、「見た目を赤くするだけの添加物」と受け取られることがあります。
しかし、食肉加工には主に次の4つの役割があります。

亜硝酸塩の4つの役割 1 色を安定させる 加熱しても 淡い赤みが残る 2 風味をつくる 塩せき肉特有の 香りと味わい 3 酸化を抑える 脂質の酸化による 風味の劣化を防ぐ 4 菌の増殖を抑える ボツリヌス菌など 一部の細菌

亜硝酸塩の4つの役割。※役割の関係をわかりやすくした模式図です

生肉を加熱した香りと、ハムの香りは同じなのか

豚肉に塩をして加熱しただけの料理があります。
一方、適切に塩せきして作ったハムもあります。
この2つでは、香りや味わいが異なります。

塩せき肉に生まれる独特の香りがあります。
これは一般にキュアードフレーバーと呼ばれます。
亜硝酸塩は、肉の色素や脂質などと反応します。
そして、「ハムらしい」と感じる色や風味の形成に関わります。

また、肉の脂質は酸化することがあります。
すると、加熱後に時間が経った肉のような酸化臭が生じます。
亜硝酸塩は、この脂質の酸化を抑える働きにも関係します。

したがって、亜硝酸塩は匂いを香料で覆い隠すものではありません。
ハムやベーコン特有の品質そのものを形づくる、食肉加工技術の一部です。

エーデルワイスファームで職人がベーコンの状態を確認している様子
肉の弾力や色、香りを確認しながら、職人が仕上がりを見極めます。

ボツリヌス菌と真空包装のリスク

ボツリヌス菌は、酸素の少ない環境で増殖できる嫌気性菌です。
ただし、真空包装しただけで直ちに危険になるわけではありません。
温度、加熱、塩分、水分活性、衛生管理を重ねます。
亜硝酸塩も、その多重管理の一つとして機能します。

なぜ、ハムやベーコンの製造に亜硝酸塩が使われてきたのでしょうか。
その大きな理由の一つが、ボツリヌス菌への対策です。
この菌は食中毒の原因となります。

ボツリヌス菌は、土壌などの自然環境に広く存在します。
そして、非常に強い毒素をつくることがあります。
また、酸素の少ない環境でも増殖できる嫌気性菌です。
そのため、真空包装された食品では適切な管理が必要です。

真空パックだから危険なのでしょうか

「真空パックだから危険」という意味ではありません。
また、「真空にすると必ず菌が増える」わけでもありません。
ボツリヌス菌の増殖や毒素産生には、複数の条件が関係します。

  • 保存温度
  • 加熱条件
  • 塩分濃度
  • 水分活性
  • 食品のpH
  • 乾燥の程度
  • 保存期間
  • 製造環境の衛生状態
  • 亜硝酸塩などによる増殖抑制

食品安全委員会は、亜硝酸ナトリウムについて次のように説明しています。
安定した食肉の色を保つだけではありません。
多種類の細菌の生育を抑え、腐敗防止に働く添加物としています。

安全は、重ねたハードルで支えられます 1 徹底した衛生管理 2 適切な塩分濃度 3 確実な加熱 4 冷蔵と乾燥の管理 5 亜硝酸塩による増殖抑制 どれか一つでは成立しません。重ねることで安全性が高まります

安全性を支える多重のハードル。※関係をわかりやすくした模式図です

亜硝酸塩だけで食品の安全を確保するわけではありません。
加熱、低温、塩分、乾燥、衛生管理を重ねます。
そのうえで、亜硝酸塩も重要な防御の一つとして使う。

これが、食肉加工における基本的な考え方です。

真空包装食品におけるボツリヌス菌対策と亜硝酸塩の役割を表現したAIイメージ
ボツリヌス菌対策を説明するAIによる概念イメージです。真空包装だけで菌の増殖が決まるわけではありません。温度や加熱、塩分を含めた総合的な管理が必要です。

野菜にも含まれるなら、亜硝酸塩は安全なのか

野菜に多く含まれるのは、主に硝酸塩です。
その一部が、口腔内や体内で亜硝酸塩へ変換されます。
ただし、野菜と加工肉では食品全体の成分や摂取状況が異なります。
そのため、含有量だけを比べて安全性を判断することはできません。

亜硝酸塩について説明するとき、よく次のような話が出てきます。

「野菜から摂取する硝酸塩のほうが、ハムから摂取する量より多い」

食品から摂取する硝酸塩の多くは、野菜に由来します。
これ自体は知られていることです。
ほうれん草やレタス、白菜に比較的多く含まれるのは主に硝酸塩です。
摂取した硝酸塩の一部は、口腔内の細菌の働きで亜硝酸塩へ変換されます。

含有量だけで比べてよいのでしょうか

ここから「野菜にもあるのだから安全」と結論づけることはできません。
野菜と食肉製品では、食品全体の構成が違うからです。

同じ数字で比べられない理由 野菜から摂る場合 ・多いのは主に硝酸塩 ・一部が体内で亜硝酸塩へ ・ビタミンCも同時に摂る ・食物繊維やミネラルを含む ・調理条件が異なる 食肉製品に使う場合 ・加えるのは亜硝酸塩 ・使用目的が定まっている ・残存量が法令で管理される ・工程中に反応して減る ・製品全体の設計に組み込む 硝酸塩と亜硝酸塩は同じ物質ではありません

野菜由来と食肉製品での違い。※関係をわかりやすくした模式図です

食品安全委員会も、同じ考え方を示しています。
野菜由来の硝酸塩と、添加物としての亜硝酸塩があります。
この2つを、単純に含有量だけで比べるべきではないとしています。

そのため、「自然界にもあるから安全」を使用の根拠にはしていません。
何のために、どれほどの量を、どのように管理して使うのか。
重要なのは、天然由来かどうかという印象ではありません。
使用目的と量、そして製造工程です。

野菜由来の硝酸塩と食肉製品に使用される亜硝酸塩の違いを説明するAIイメージ
野菜に多く含まれるのは主に硝酸塩で、その一部が体内で亜硝酸塩へ変換されます。野菜と加工肉では食品全体の成分が異なります。そのため、含有量だけで単純比較することはできません。画像はAIによる概念イメージです。

欧州は亜硝酸塩をどう判断しているのか

欧州は、亜硝酸塩を悪い物質として排除しているわけではありません。
ボツリヌス菌などを抑える必要性を認めています。
そのうえで、安全性を維持できる範囲に使用量を管理する考え方を採っています。

ハムやソーセージの食文化が根付く欧州があります。
そこでは、硝酸塩と亜硝酸塩がどう判断されているのでしょうか。

野菜は、食品全体の利益を含めて評価する

欧州食品安全機関(EFSA)は、野菜の硝酸塩も評価しています。
摂取量と健康への影響を見ています。
その一方で、野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維が含まれます。
つまり、野菜を食べることによる栄養上の利益があります。

EFSAは、一般的な量の野菜を食べる場合について評価しました。
硝酸塩による潜在的なリスクよりも、野菜を食べる利益のほうが大きいとしています。
ただし、これは「天然だから安全」という判断ではありません。
摂取量を評価したうえで、野菜という食品全体がもたらす利益も含めています。

食肉製品では、安全性と必要性の両方を見る

EFSAは2017年の再評価で、添加される亜硝酸塩と硝酸塩を検討しました。
当時設定されていた安全な水準について結論を出しています。
消費者を十分に保護するものと評価しました。

一方で、欧州では使用基準の見直しも進められています。
微生物学的な安全性を維持しながら、ニトロソアミンの生成を抑えるためです。
EU規則2023/2108により、2023年に上限が引き下げられました。

必要な範囲を超えて使わないという考え方

これは、亜硝酸塩を危険な物質として全面的に否定したものではありません。
規則が示した目的は次のとおりです。
微生物学的な安全性を維持しながら、ニトロソアミンの生成を低く抑えることです。

必要だから使う。必要な範囲を超えて使わない。

亜硝酸塩の微生物制御上の役割を認めます。そのうえで、安全に活かせる量へ精密に管理するという考え方です。

使用量をどう考えるか 微生物制御に必要な範囲 ここから先は使わない 上限 安全性を保つために使う 生成物を低く抑えるために抑制する

欧州の基本的な考え方。※関係をわかりやすくした模式図です

野菜と食肉製品では、何を見ているのか

← 表は横にスクロールできます →

比較項目 野菜由来の硝酸塩 食肉製品に使う亜硝酸塩
主な評価対象 硝酸塩の摂取量と、野菜全体の栄養上の利益 使用量、微生物制御、製品中の反応や生成物
欧州の基本判断 一般的な摂取では、野菜を食べる利益が潜在的リスクを上回る 安全性と品質への必要性を認め、使用量を管理する
管理の方向性 野菜の種類、摂取量、年齢なども考慮する 微生物学的安全性を保ちながら、必要な範囲に抑える

※測っている対象が異なるため、数値の大小で規制の厳しさを比較することはできません。

欧州の判断からも分かることがあります。
亜硝酸塩は「危険だから仕方なく使う物質」ではありません。
安全性と品質に必要な働きを持つからこそ、その量を正確に管理して使う。
この考え方は、当ファームが長年大切にしてきた姿勢とも共通しています。

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無添加・無塩せきなら必ず安全なのか

亜硝酸塩を使わない食肉製品も、安全に作ることができます。
製品に応じた加熱、温度、塩分、水分活性、衛生管理によって支えられます。
一方、「無添加」という表示だけで品質のすべてを判断することもできません。

ここまで読むと、こう思う方もいるかもしれません。
「亜硝酸塩を使わないハムやベーコンは危険なのか」
しかし、そういう意味ではありません。

亜硝酸塩を使わない食肉製品も、安全に作ることができます。
製品の特性に合わせ、適切な製造基準と衛生管理を行います。
日本の食肉製品の規格基準にも、製造法に応じた複数の管理方法が定められています。

大切なのは、次のどちらか一方に決めつけないことです。

  • 亜硝酸塩を使っているから危険
  • 亜硝酸塩を使っていないから安全

食品の安全性は、一つの原料の有無だけでは決まりません。
加熱、温度、塩分、水分、包装が関わります。
また、保存期間や衛生状態も関わります。
製品全体の設計によって支えられています。

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塩せきの方式や仕上がりの違いは「ベーコンの製法比較」で解説しています。

「使わないリスク」も含めて考えるとどうなるか

「無添加」は、使うリスクばかりが語られがちです。
でも、本当に考えるべきなのは「使わないリスク」も含めた比較ではないでしょうか。
例えば亜硝酸塩には、健康への懸念だけでなく、食中毒菌の増殖を抑える役割もあります。
いずれにしても、リスクをゼロにすることはできません。

なお、懸念されているのは亜硝酸塩そのものではありません。
条件によって生成しうるニトロソアミンという物質です。
各国が使用量の上限を定めているのは、この生成を低く抑えるための仕組みです。
つまり、規制は危険の証拠ではなく、管理の仕組みです。

IN SHORT

「入っているか、いないか」ではなく、「なぜ使われているのか」で考えたいものですね。

これは「気にしても仕方がない」という話ではありません。
また、「無添加を選ぶ意味がない」という話でもありません。
無添加を選ぶ人にも、選ぶ理由があります。
何のために使われているのかを知って選べることが大切です。

無塩せきとは何か

無塩せきとは、亜硝酸塩などの発色剤を使わずに作ることを指す表示です。
塩を使っていないという意味ではありません。

まず、塩せき(=肉を塩漬けにする工程)には食塩を使います。
そのうえで、発色剤を加えるのが一般的な塩せきです。
つまり、無塩せきとは発色剤を使わない製法を指します。
したがって、食塩そのものは無塩せき製品にも使われています。

「無塩せき」と「亜硝酸塩が存在しない」は同じなのか

海外の「Uncured」製品には、植物由来の原料を使う方法があります。
例えば、セロリパウダーや野菜ジュース粉末です。
これらには、硝酸塩が含まれることがあります。
その硝酸塩を微生物の働きで亜硝酸塩へ変え、塩せきに利用します。

つまり、精製した亜硝酸ナトリウムを加えない場合があります。
それでも、工程の中で亜硝酸塩が生成されることがあります。

植物由来だからといって、製造管理が不要になるわけではありません。
原料中の硝酸塩量や、使用する微生物を把握する必要があります。
また、温度、時間、製品中の残存量も管理しなければなりません。
一方、規格化された原料を使い、適切に品質管理している製造者もいます。

したがって、次のいずれの単純な結論も正確ではありません。

  • 天然由来だから必ず安全
  • 植物由来だから管理できない
  • 食品添加物として加えるから危険

アメリカでも「無塩せき」の表示が議論になりました

アメリカでは、こうした商品が「Uncured(無塩せき)」と表示されてきました。
しかし実際には、植物由来の硝酸塩が亜硝酸塩へ変化します。
そのため、通常の塩せきと同じように保存性や風味に作用します。

このためアメリカでは、表示制度の見直しを求める動きが起きました。
米国農務省(USDA)食品安全検査局も、表示制度を示しています。
そのうえで、消費者団体から変更を求める申立てが提出されました。

表示だけでは分からないことがあります

「無添加」「無塩せき」「自然由来」という言葉は、食品選びの一つの情報になります。しかし、その言葉だけでは判断できないことがあります。加熱条件、衛生管理、保存期間、原料の規格などです。

食品の安全性は、一つの表示ではなく、製品と製造工程の全体から考える必要があります。

私たちも約40年、無塩せき製法を試してきました

当ファームは、無塩せきのハムやベーコンを初めから否定していませんでした。
約40年にわたり、複数の方法を試しました。
しかし、求める香り、味、品質、安定性を同時に満たす結論には至りませんでした。

私たちも、この約40年間、亜硝酸塩を使わない試作を重ねてきました。
単純に亜硝酸塩を使わない方法だけではありません。
セロリパウダーなど、植物由来の原料を利用する方法にも取り組みました。
それでも、長年作り続けてきた品質には届きませんでした。

大きかったのは、香りと味わいの違いです

亜硝酸塩を使わずに試作した製品がありました。
そこでは、求める塩せき肉らしい芳醇な香りが十分に得られませんでした。
また、加熱した豚肉に近い香りが残ることもありました。
獣肉特有の匂いが残る場合もありました。

もちろん、味や香りの感じ方には個人差があります。
しかし、私たちが目指しているのは、豚肉を塩漬けして加熱しただけの味ではありません。

約4週間の長期氷温熟成によって引き出される肉の旨味。
舌の上でまろやかにほどける脂身の甘み。
2年間自然乾燥させた薪と炭による、奥深く穏やかな香り。
それらが重なることで、目指す味わいが生まれます。

私たちの試作条件では、亜硝酸塩を使わない製品はその味わいに届きませんでした。

品質を安定させるための管理も複雑になりました

植物由来原料を使う方法には、難しさがありました。
原料や製造条件によって、反応が変わる可能性があります。
そのため、製品中の状態を継続的に確認する必要がありました。
検査や管理の項目が増えれば、時間と費用も増えます。

さらに、保存性の確保も課題でした。
私たちの試作条件では、従来品と同じ保存性を安定して確保できませんでした。
商品として提供するなら、冷凍を含めた見直しが必要でした。
保存方法や流通方法そのものを変える話になります。

これは、すべての無塩せき製品に当てはまる意味ではありません。
あくまで、当ファームが長年行ってきた試作で得た結果です。

私たちは、流行する言葉に製品を合わせませんでした。
自分たちが本当においしいと思えることを優先しました。
そして、安定した品質でお届けできることを選びました。

MAKER’S CHOICE

リン酸塩を使わない理由と歩留まりは、ベーコンの製法比較で解説しています。

エーデルワイスファームが亜硝酸塩を使う理由

私たちは、「添加物を使わないこと」だけを目的にはしていません。
おいしさ、安全性、品質の安定を総合的に考えています。
亜硝酸塩を必要最小限使用し、保存料と着色料に頼らない製品づくりを続けています。

エーデルワイスファームは、北海道北広島市のハム・ベーコン製造者です。
ベーコン節®も自社で製造しています。
1920年代のドイツに由来する考え方や技術を大切にしています。
そして、効率だけを優先しない手作り製法を続けています。

OUR METHOD

マイナス2℃

氷温帯での熟成温度

約4週間

塩漬液での熟成期間

10kg→約6kg

原料肉から完成まで

70mg/kg

亜硝酸根の残存上限(法令)

肉を約4週間かけて長期氷温熟成します。
そうして、肉本来の旨味と脂身のまろやかな口どけを引き出します。
燻製は冷燻ではなく、温燻です。
2年間自然乾燥させた薪と炭を使い、職人が火力を調整します。

こうした長い工程を安全に重ねるには、管理が欠かせません。
原料、塩分、温度、時間、衛生状態を一つずつ管理します。
亜硝酸塩も、その管理の中で重要な役割を担っています。

必要なものだからこそ、必要な量だけ使う

日本では、食肉製品に残存できる亜硝酸根の量が定められています。
1kgあたり70mg(=0.070g)を超えてはならないという成分規格です。
割合にすると、0.007%にあたります。
これは、好きな量を使用してよいという意味ではありません。

必要な働きを活かしながら、安全に使うための仕組みです。
製品中に残る量を管理しています。
当ファームでも、品質と安全性を考慮し、必要最小限の使用にとどめています。

  • 亜硝酸塩:品質と安全性を考慮し、必要最小限使用
  • 保存料:不使用
  • 着色料:不使用
  • リン酸塩:不使用

なお、亜硝酸塩は食品表示上「発色剤」に分類されます。
ここでいう「着色料」とは異なる添加物区分です。
したがって、「保存料・着色料不使用」と「添加物不使用」は同じ意味ではありません。
この違いを曖昧にしないことも、食品をつくる者の責任だと考えています。

OUR POLICY

使用量は法令で定められた基準に従っています。実際の配合は商品表示を優先してください。工程全体の考え方は製法の解説記事でご覧いただけます。

亜硝酸塩は、安全性と品質を支える役割を持つ。
だからこそ、必要な量を正確に管理して使う。

私たちが目指しているのは、表示上の分かりやすさだけではありません。目指すのは、時間をかけて生まれる香りと肉の弾力です。脂の甘みまで含めて、安心して味わっていただけます。

この記事に出てきた用語

亜硝酸塩の話には、専門用語が多く出てきます。
ここでまとめて確認できます。

添加物と表示に関する用語

← 表は横にスクロールできます →

用語 意味
亜硝酸塩 食品添加物。菌の増殖抑制、風味の形成、酸化の抑制、発色に関わります
発色剤 食品表示上の用途名。表示は「発色剤(亜硝酸ナトリウム)」となります
亜硝酸根 製品中に残る亜硝酸イオンのこと。残存量の基準はこの形で示されます
保存料 微生物の増殖を抑えて保存性を高める添加物。亜硝酸塩とは別の分類です
リン酸塩 保水性を高める目的で使われる添加物。当ファームでは使用していません
無塩せき 発色剤を使わずに作ることを指す表示。塩を使わない意味ではありません
ニトロソアミン 条件によって生成しうる物質。各国が使用量の上限を定める理由です

※実際の配合は商品表示を優先してください。

製造と保存に関する用語

← 表は横にスクロールできます →

用語 意味
塩せき 肉を塩漬けにする工程。塩味を付けるだけの工程ではありません
塩漬液 塩せきに使う液体。当ファームは肉をこの液へ浸します
キュアードフレーバー 塩せき肉に生まれる独特の香り。加熱しただけの肉とは異なります
氷温帯 0℃から凍り始める温度までの範囲。凍結の手前の温度帯です
温燻 30〜80℃で数時間かけて燻す方法。冷燻・熱燻と区別されます
嫌気性菌 酸素の少ない環境でも増殖できる菌。ボツリヌス菌もこれにあたります
水分活性 食品中で微生物が使える水の割合。低いほど菌は増えにくくなります
スターターカルチャー 発酵や熟成のために意図的に加える微生物のことです

※温度帯は一般的な目安です。製品や製造者により幅があります。

無添加ハムと安全性に関するよくある質問

子どもに食べさせるなら、無添加・無塩せきのほうが安全ですか?

A

無添加・無塩せきという表示だけで、安全性の優劣を判断することはできません。亜硝酸塩を使用しない製品も、安全に作ることができます。適切な加熱、温度、塩分、衛生管理などによって支えられます。一方、亜硝酸塩を使用する製品では法令に基づいて量を管理します。そして、ボツリヌス菌の増殖抑制などに役立てています。食品全体の製造方法と、表示された保存方法を確認することが大切です。

亜硝酸塩は、肉を赤く見せるためだけに使うのですか?

A

いいえ。色を安定させるほか、ハムやベーコン特有の風味形成に関わります。また、脂質の酸化抑制やボツリヌス菌などの増殖抑制にも関わります。食品表示では「発色剤」と表示されますが、役割は発色だけではありません。

亜硝酸塩は体に悪いのでしょうか?

A

懸念されているのは亜硝酸塩そのものではありません。食品中や体内の条件によって生成しうるN-ニトロソ化合物です。そのため、使用量や残存量の管理が必要とされています。日本でも、安全性評価に基づいて使用対象と残存基準が定められています。欧州食品安全機関(EFSA)は2017年に再評価を行いました。当時設定されていた安全な水準は、消費者を十分に保護するものと評価しています。「一切リスクがない」「含まれているだけで危険」のどちらにも単純化できません。基準に沿った使用と、偏りのない食生活を考えることが重要です。詳しくはEFSAの再評価をご覧ください。EFSAの発表を見る

野菜にも含まれているなら、ハムの亜硝酸塩も安全ですか?

A

正確には、野菜に多く含まれるのは主に硝酸塩です。その一部が口腔内や体内で亜硝酸塩へ変換されます。ただし、野菜と加工肉では食品全体の成分や調理条件が異なります。そのため、含有量だけで安全性を単純比較することはできません。自然界にも存在するという事実だけを、安全性の根拠にするべきではありません。

セロリパウダーを使えば、亜硝酸塩を使わずに作れますか?

A

セロリパウダーなどに含まれる硝酸塩を利用する製法があります。微生物の働きで亜硝酸塩へ変換し、塩せきに使います。この場合、精製した亜硝酸ナトリウムは加えていません。それでも、製造工程中に亜硝酸塩が生成されることがあります。植物由来であっても、管理は必要です。原料の規格、温度、時間、微生物、最終製品の状態を確認します。

保存料不使用なら、賞味期限が短くなるのですか?

A

保存料の有無は、保存期間を左右する要素の一つです。ただし、それだけで賞味期限が決まるわけではありません。加熱条件、包装、塩分、水分活性、衛生状態、保存温度などを踏まえて設定されます。実際の賞味期限と保存方法は、必ず各商品の表示をご確認ください。

エーデルワイスファームの商品は完全無添加ですか?

A

いいえ。「完全無添加」「添加物ゼロ」とは表示していません。品質と安全性を考慮し、亜硝酸塩を必要最小限使用しています。一方、保存料、着色料、リン酸塩は使用していません。「保存料・着色料不使用」と「添加物不使用」は異なります。

まとめ|無添加という言葉だけで安全性は決まらない

一つの原料だけで結論づけることはできません。
使っているから危険、使っていないから安全とは言えないからです。
大切なのは、使用目的、使用量、製造工程、保存方法まで見ることです。

亜硝酸塩には、色や風味を形成する役割があります。
また、脂質の酸化を抑える働きもあります。
さらに、ボツリヌス菌などの増殖も抑制します。
一方で、量に関係なく使用してよいものではありません。

CHECK POINTS

1 何のために使われているのか
2 どれほどの量が管理されているのか
3 どんな工程を経て作られているのか
4 どのように保存すればよいのか

無塩せき製品は避けたほうがよいのでしょうか

そうではありません。
亜硝酸塩を使わない食肉製品も、別の製造管理によって安全に作れます。
だからこそ、私たちは無塩せき製品そのものを否定しません。

私たち自身も約40年にわたり、亜硝酸塩を使わない方法を試してきました。
植物由来原料を使う方法にも取り組みました。
そのうえで、求める香りと味、品質、安全性を安定して実現するために判断しました。
亜硝酸塩を必要最小限使用するという選択です。

「無添加」という一言だけでは見えない、作り手の技術と管理があります。
原材料表示を見るときには、その先にも目を向けていただければ幸いです。
どのような考え方で、どれほどの時間と手間をかけて作られているのか。

CONCLUSION

「入っているか、いないか」ではなく、
「なぜ使われているのか」で考える。

無添加を選ぶ人にも、選ぶ理由があります。
どちらが正しいかではありません。それぞれの製品がどう作られているかを知って選べることです。
この記事が、その材料になれば幸いです。

記事で紹介した商品

ONLINE SHOP

約4週間の熟成と、薪・炭による温燻。

表示だけでは伝わらない、時間をかけた香りと味わいをお確かめください。

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参考資料・出典

日本の公的機関

欧州・米国の公的機関

※本記事は2026年8月8日時点の公的資料をもとにしています。あわせて、当ファームの長年の試作・製造経験を反映しました。自社の試作結果は、すべての無塩せき製品に共通する結論ではありません。賞味期限、保存方法、原材料、アレルゲンについては、各商品の表示をご確認ください。

※本記事は、食品と製造プロセスに関する客観的な情報の提供を目的としています。個人の健康状態や持病、食事制限に対する医学的な推奨を行うものではありません。食事上の個別のご不安がある場合は、専門家にご相談ください。かかりつけの医師、薬剤師、管理栄養士などです。