「ホテルの朝食のように、カリカリベーコンを焼きたいのに、なぜかグニャッとしてしまう」
「焼いているうちに水っぽくなり、最後は焦げてしまう」
そんな経験はありませんか。
実はそれ、焼き方の問題ではないかもしれません。
原因は、ベーコンそのものに含まれる「水分」と「副原料」にあることが多いのです。
そこで今回、スーパーで買える市販ベーコン2種と、当ファームの長期熟成ベーコンを用意しました。
そして、まったく同じ条件で10分間焼き、その差を記録しました。
結果は、写真で見てわかるほど明確でした。
この記事では、検証の結果と、ラベルだけでカリカリベーコン向きかどうかを見分ける方法をお伝えします。
焼き方そのものを知りたい方は、プロの焼き方をまとめた記事をご覧ください。
カリカリベーコンにならない原因は、焼き方ではなく「水分」
カリカリベーコンにならない主な原因は、加熱中にベーコンから出てくる水分です。
水が残っているあいだ、フライパンの表面温度は上がりきりません。
本来、ベーコンを焼くと脂が溶け出します。
そして、その脂で自分自身を揚げ焼きにする状態になります。
この状態になると、香ばしい焼き色と、パリッとした食感が生まれます。
ところが、水分を多く含む製品では順番が変わります。
まず、加熱とともに水が染み出します。
すると、フライパンの温度が下がります。
つまり、焼いているつもりでも、実際には蒸している状態に近づきます。
焦げるのは、糖とたん白が多いから
問題は、水が飛びきったあとです。
表面の温度は、そこから一気に上がります。
この急上昇に、副原料が重なります。
焼き色は、メイラード反応という化学反応で生まれます。
この反応には、還元糖とアミノ化合物の両方が必要です。
水あめなどの糖類が、還元糖にあたります。
卵たん白や乳たん白は、アミノ化合物にあたります。
保水性を高めた製品は、これらを多く含みます。
つまり、褐変の材料を余分に抱えた状態です。
そのため、温度が上がった瞬間に色づきが進みます。
芯まで水が抜ける前に、表面が黒くなるわけです。
水が残っているあいだは、フライパンの中は「煮る」に近い状態です。
水が飛んだ瞬間に温度が上がり、糖とたん白が一気に反応して黒くなります。
つまり、焦げやすさは焼き方より先に、原材料で決まっています。
製品によって水分量が違う理由
では、なぜ製品によって水分量が違うのでしょうか。
理由は、塩を肉に届ける方法と、熟成にかける時間の差にあります。
詳しくはベーコンの製法を比較した記事で解説しています。
【焼き比べ検証】市販ベーコンと長期熟成ベーコンを同じ条件で焼く
市販ベーコン2種と当ファームの長期熟成ベーコンを、同じフライパン・同じ火加減・同じ10分で焼きました。
結果は、焼く前の段階からすでに差が出ていました。
※市販品の銘柄は公開していません。一般に流通している製品から2種を選びました。
焼く前|包丁を入れた時点で差が出た
まず、ブロックの状態を比べました。
肉の締まり具合に、はっきりとした違いが見られました。

市販品は肉質がやわらかく、包丁を入れると形が崩れやすい状態でした。
そのため、均一な厚さに切りそろえるのに苦労しました。
一方、当ファームのベーコンは身が締まっており、まっすぐに切ることができました。
加熱中|脂が出るまでの時間が違った
次に、フライパンに乗せて弱火にかけました。
ここで、決定的な違いが現れました。


市販品2種は、脂がなかなか溶け出しませんでした。
そして、水分が蒸発したあとは、フライパンに張り付くようにして表面だけが黒くなりました。
対照的に、当ファームのベーコンは早い段階で透明な脂が出てきました。
その脂で自身を揚げ焼きにする状態になり、香ばしい薫香が立ちのぼりました。

10分後|カリカリになったのは1種類だけだった
そして、10分後の状態を焼く前と並べました。
結果は一目でわかるものでした。

市販品2種は、10分焼いてもカリカリにはなりませんでした。
水分が抜けた分だけ縮んでいます。
しかし、表面だけが焦げ、芯は湿ったままという状態でした。
当ファームのベーコンは、全体がきつね色に仕上がりました。
箸で持ち上げると、パリッと音がする状態になりました。
ただし、味の感じ方には個人差があります。
なぜ差が出たのか|ラベルに書かれている手がかり
差の理由は、原材料表示に現れます。
加水と副原料が多い製品ほど、焼いたときに水が出やすくなります。
ベーコンには、保水性を高めるための原材料が使われることがあります。
例えば、たん白質系の副原料や、リン酸塩などです。
リン酸塩には、肉の保水性を高める働きがあります。
あわせて、水あめなどの糖類が加えられることもあります。
ただし、これらが使われていること自体は問題ではありません。
やわらかい食感を出すためには、必要な技術です。
目的が違うだけの話です。
JASの「熟成ベーコン類」という物差し
選ぶときの客観的な目安として、日本農林規格(JAS)があります。
そのなかに「熟成ベーコン類」という規格が定められています。
この規格は、2025年2月28日に改正されました。
この規格には、たん白質系の副原料は挙げられていません。
つまり、卵たん白や乳たん白を使った製品は、この枠には入りません。
したがって、原材料表示を見れば、どちら寄りの設計かがわかります。
原材料が「豚肉・食塩・砂糖・香辛料」だけに近いほど、水分は少なめの設計です。
逆に、たん白や保水剤の名前が並ぶほど、やわらかさを狙った設計になります。
市販品が「悪い」わけではありません
誤解のないようにお伝えします。
手に取りやすい価格の市販ベーコンには、大きな存在意義があります。
限られたコストで、誰もが買える価格を実現する。
そして、子どもでも食べやすいやわらかさを出す。
そのためには、保水性を高める技術が欠かせません。
スープの具にする場合はどうでしょうか。
やわらかい食感のほうが合う場面もあります。
目的次第で、適した製品は変わります。
← 表は横にスクロールできます →
| 設計の方向 | 向いている使い方 | 焼いたときの傾向 |
|---|---|---|
| 保水性を高めた設計 | スープ、煮込み、やわらかい食感を好む場合 | 水が出やすく、カリカリにはなりにくい |
| 水分を抜いた設計 | カリカリベーコン、厚切りステーキ、贈り物 | 脂が出やすく、焼き色がつきやすい |
※表は一般的な傾向です。原料、塩分、温度、期間、加熱、燻煙により仕上がりは変わります。
※実際の配合は商品表示を優先してください。
カリカリベーコンになる製品の見分け方5つ
売り場では、パッケージの裏だけを見れば判断できます。
確認する場所は5か所です。
ただし、原材料が少なければ安全、という話ではありません。
反対に、添加物があるから危険、ということもありません。
それぞれに役割があります。
亜硝酸塩の役割については、別の記事で詳しく解説しています。
ここでは、あくまで「焼いたときにどうなるか」という観点だけで整理しました。
用途別の選び方|スライスかブロックか
カリカリベーコンを目的にするなら、選び方は使う場面で決まります。
まず試すならスライス、厚さにこだわるならブロックです。
厚さによって、焼き上がりは変わります。
薄く切れば早くカリカリになります。
一方、厚く切れば食感は残りますが、時間はかかります。
具体的な焼き方は、焼き方の記事にまとめました。
当ファームの場合|マイナス2℃で約4週間
当ファームのベーコンは、塩漬液に肉を浸す方式で仕上げています。
そして、マイナス2℃の氷温帯で約4週間かけて熟成させます。
まず、私たちは塩漬液を注入しません。
また、肉を動かして液を抱かせるタンブリングも行いません。
そのかわり、時間をかけて味をなじませます。
この工程を経ると、原料肉10kgから完成するのは約6kgです。
量を増やすのではなく、水分を抜いていく設計です。
だからこそ、フライパンに乗せると早い段階で脂が出てきます。
量を増やすのではなく、時間をかけて水分を抜く。
それが、焼いたときの差になって現れます。
燻製には、2年間自然乾燥させたオーク(楢)材の薪と炭を使います。
そして、職人が肉の状態を見ながら火力を調整し、直火の温燻で仕上げます。
なお、ロットによって数値には多少の幅があります。
第三者機関からの評価
私たちはJASの格付を受けていません。
そのかわり、熟成温度と期間、注入の有無をこの記事で公開しています。
数字を出したうえで、味そのものは外部の審査に委ねてきました。
薪・炭火仕上げベーコンは、国際味覚審査機構(ITI)の優秀味覚賞で三つ星の評価を受けています。
この評価は、2020年から2026年まで7年連続で続いています。
また、10年間のうち7回三つ星を獲得した製品に授与されるダイヤモンド賞を、2026年に受賞しました。
受賞の一覧と公式証書は受賞実績のページにまとめています。

この記事に出てきた用語
ベーコン選びには、聞き慣れない言葉がいくつか出てきます。
ここでまとめて整理しておきます。
肉に食塩などを加え、低温で漬け込む工程のこと。ベーコンづくりの中心となる作業です。
塩せきに使う液。食塩や砂糖などを配合します。ピックル液とも呼ばれます。
凍る直前の低い温度帯で寝かせること。塩を届ける方法とは別の、温度と時間の管理を指します。
肉に水分を保たせるために使う添加物。リン酸塩などが該当します。
30〜80℃ほどの温度帯で数時間かけて燻す方法。冷燻や熱燻とは温度帯が異なります。
発色剤を使わずに塩せきを行ったもの。公正競争規約で定義されています。保水剤を使っていないという意味ではありません。
カリカリベーコンに関するよくある質問
ベーコン選びでよく寄せられる質問をまとめました。
カリカリベーコンにしたいのですが、どう選べばいいですか?
原材料表示を見て、豚肉のあとに続く品目が少ないものを選んでください。
卵たん白や乳たん白、水あめ、リン酸塩の記載が多いほど、水分が出やすく、焦げやすくもなります。
また、熟成期間が具体的な日数で書かれているかも目安になります。
焼き方を変えればカリカリベーコンになりますか?
ある程度までは改善します。
油をひかず、冷たいフライパンから弱火で焼くと差が出ます。
ただし、水分と副原料が多い製品では、この方法でも限界があります。
「無塩せき」のベーコンならカリカリになりますか?
一概には言えません。
無塩せきとは、発色剤を使わずに塩せきを行ったものを指します。
つまり、保水剤を使っていないという意味ではありません。
原材料表示を個別に確認してください。
厚切りと薄切りでは、どちらがカリカリになりますか?
薄いほうが早くカリカリになります。
厚切りは中心まで火が通るのに時間がかかります。
そのため、弱火でじっくり加熱する必要があります。
スライスとブロック、どちらを選べばいいですか?
まず試すならスライスが手軽です。
包丁を使わず、届いたその日に焼けます。
一方、厚さを自分で決めたい場合はブロックが向いています。
この記事の検証で焼いたのも、ブロックから切り出したものです。
エーデルワイスファームのベーコンはどこで買えますか?
北海道北広島市の直売所のほか、公式オンラインショップでもお求めいただけます。
お電話でのご注文も承っております。
まとめ|カリカリベーコンは焼く前に決まっている
カリカリベーコンになるかどうかは、フライパンに乗せる前にほぼ決まっています。
焼き方の前に、まず水分の少ない製品を選ぶことが近道です。
今回の検証では、同じ条件で焼いても仕上がりに差が出ました。
その差は、原材料表示から読み取れます。
売り場では、裏のラベルを1枚めくってみてください。
そのうえで、焼き方を整えると仕上がりはさらに変わります。
手順は焼き方の記事にまとめました。
ぜひ、朝食の一皿でお確かめください。
ご自宅で本物のカリカリベーコンを
マイナス2℃で約4週間。
使い方に合わせて、2つからお選びください。
