ベーコンの製法には、インジェクション(注入式)、ドライキュア(乾塩式)、ウェットキュア(湿塩式・浸漬式)などがあります。
同じように見えるベーコンでも、製法は同じではありません。
塩漬液を針で注入する方法があります。
乾いた塩を肉へすり込む方法もあります。
肉を塩漬液へ浸す方法もあります。
塩を肉へ届ける道筋は、このようにさまざまです。
違いは、そこだけではありません。
熟成の温度と期間も、水分量や食感を左右します。
ベーコンの製法は、ドライかウェットかだけでは判断できません。
注入の有無も確認する必要があります。
熟成にかける時間も見逃せません。
この記事では、代表的なベーコンの製法を比較します。
約4週間の氷温熟成が持つ意味も解説します。

ベーコンの製法は「塩せき」の方法で違う
ベーコンの製法は、塩せき(=肉を塩漬けにする工程)で塩や塩漬液をどう届けるかで整理すると分かりやすくなります。方法によって、必要な時間や水分の動きも変わります。
三つの用語を確認しましょう。
- インジェクション(注入式):針を使い、塩漬液を肉の内部へ注入する方法
- ドライキュア(乾塩式):塩などを肉の表面へ直接すり込む方法
- ウェットキュア(湿塩式・浸漬式):肉を塩漬液へ浸し、表面から塩分を浸透させる方法
なお、塩漬液はピックル液とも呼ばれます。
一般的な配合は塩や砂糖で、香辛料を加える場合もあります。
ただし、具体的な配合は製造者ごとに異なります。
国際食品規格のCodexでも、乾塩、浸漬、注入による方法が区別されています。
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| ベーコンの製法 | 日本語での説明 | 基本的な方法 | 塩の入り方 |
|---|---|---|---|
| インジェクション | 注入式 | 針で塩漬液を注入する | 肉の内部へ直接届ける |
| ドライキュア | 乾塩式 | 塩を肉へ直接すり込む | 表面から徐々に浸透する |
| ウェットキュア | 湿塩式・浸漬式 | 肉を塩漬液へ浸す | 表面から徐々に浸透する |
※日本語表記は理解を助けるための説明です。資料により「湿塩法」「塩水法」「浸漬法」などの表現も使われます。
「無添加」「無塩せき」という表示の読み方と、公的機関がどう評価しているかは添加物と安全性の解説記事をご覧ください。
ベーコンの製法① インジェクション(注入式)
ベーコンの製法の一つであるインジェクションは、多数の針を使い、塩漬液を肉の内部へ届ける方法です。短時間でも均一に仕上げやすくなります。
インジェクションは合理的な技術です。
厚い肉にも塩漬液を届けられます。
そのため、中心部まで味を付けやすくなります。
製品ごとの味の差も抑えやすくなります。
製造期間を短縮しやすい点も特徴です。
大量生産にも適した方法だといえます。
インジェクションは水増しなのか
ただし、インジェクションを一律に「水増し」と呼ぶのは正確ではありません。
本来は、塩漬液を肉の内部へ届ける技術です。
注入量は製品ごとに異なります。
塩漬液の配合にも違いがあります。
保水を重視する設計もあります。
その場合、リン酸塩を使うことがあります。
リン酸塩には保水性を高める働きがあり、加熱時の歩留まり改善にも使われます。
したがって、注入の有無だけで品質は判断できません。
- 塩漬液をどれだけ注入するか
- どの原材料を配合するか
- 保水剤を使用しているか
- 注入後に熟成しているか
これらの条件を合わせて見る必要があります。

ベーコンの製法② ドライキュア(乾塩式)
ドライキュアは、塩や砂糖、香辛料などを肉の表面へ直接なじませるベーコンの製法です。塩は表面から時間をかけて浸透します。
ドライキュアでは、塩水に肉を浸しません。
代わりに、乾いた塩を直接使います。
塩が表面から徐々に浸透し、同時に肉から水分が出ていきます。
そのため、肉質が締まりやすくなります。
味も凝縮しやすい傾向があります。
ただし、管理には技術が必要です。
肉の厚さで浸透速度が変わるからです。
形状によっても差が出ます。
温度や湿度の管理も欠かせません。
ドライキュアなら必ず高品質なのか
ドライキュアという名称だけでは、品質を判断できません。
原料肉の品質も重要です。
使用する塩の量も仕上がりへ影響します。
熟成期間や燻煙方法も確認が必要です。
ウェットキュアよりも味にムラも出やすいので、時間や経験など技術が問われます。
したがって、長期間なら必ずおいしいとは限りません。
ベーコンの製法③ ウェットキュア(湿塩式・浸漬式)
ウェットキュアは、肉を塩漬液へ浸し、表面から塩分を浸透させるベーコンの製法です。針で液を注入するインジェクションとは異なります。
ウェットキュアでは液体を使います。
そのため、乾塩式とは区別されます。
ただし、ウェットキュアにも幅があります。
短期間で仕上げる製品があります。
長期間漬け込む製品もあります。
低温でじっくり熟成する場合もあります。
インジェクションを併用する製品もあれば、注入を行わない製品もあります。
ウェットキュアは水っぽくなるのか
ウェットキュアだから水っぽい、とは限りません。
塩漬液の配合によって結果が変わるからです。
漬け込む期間も影響します。
注入の有無も関係します。
熟成中の水分移動も見逃せません。
したがって、製法名だけで水分量は判断できません。
3種類のベーコンの製法を比較
三つのベーコンの製法は、塩の浸透速度、生産性、水分の動き、味の均一性が異なります。ただし、最終的な味は全工程の組み合わせで決まります。
インジェクションは、短時間で均一に仕上げやすい製法です。
ドライキュアは水分が抜けやすい傾向があります。
ウェットキュアは、配合や熟成期間により仕上がりが変わります。
どれか一つが常に優れているわけではありません。
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| 比較項目 | インジェクション 注入式 |
ドライキュア 乾塩式 |
ウェットキュア 湿塩式・浸漬式 |
|---|---|---|---|
| 塩せきの方法 | 針で内部へ注入 | 塩を直接すり込む | 塩漬液へ浸す |
| 浸透速度 | 速めやすい | 比較的ゆっくり | 比較的ゆっくり |
| 味の均一性 | 均一にしやすい | 管理技術に左右される | 比較的整えやすい |
| 水分の傾向 | 注入量と配合による | 減少しやすい | 配合と期間による |
| 製造時間 | 短縮しやすい | 長くなりやすい | 製品により幅がある |
| 生産性 | 高めやすい | 低くなりやすい | 中程度 |
| 主な特徴 | 短時間で均一にしやすい | 肉質を締めやすい | 穏やかになじませやすい |
※表は一般的な傾向です。原料、塩分、温度、期間、加熱、燻煙により仕上がりは変わります。
同じ湿塩式でも、時間の使い方で変わる
同じ湿塩式でも、私たちは4週間。
エーデルワイスファームでは、調味液を注入せず、肉を動かして液を抱かせるタンブリングも行いません。
氷温帯で約4週間、ゆっくりと味を浸透させ、原料肉10kgから完成するのは約6kg。
量を増やすのではなく、時間をかけて肉本来の旨味を引き出します。
ベーコンの製法と氷温熟成は別の考え方
ベーコンの製法を理解するには、塩を届ける方法と、熟成させる温度・時間を分けて考える必要があります。氷温熟成は、塩せきの方法ではありません。
ドライキュアは塩せきの方法です。
ウェットキュアも塩せきの方法です。
インジェクションも、同じ軸にあります。
一方、氷温熟成は別の軸です。
熟成する温度と時間を示す言葉だからです。
ウェットキュアと氷温熟成は両立します。
ドライキュアでも、熟成期間を設けられます。
塩せきは「どう味を入れるか」、熟成は「どのくらいの温度で、どれだけ待つか」。別々の話なので、組み合わせて設計します。
- 熟成温度
- 熟成期間
- 肉の厚さ
- 塩分濃度
- 水分の動き
これらを総合して設計します。
低温で時間をかける意味
肉は寝かせるだけで、良い熟成が出来るとは限りません。
温度が高ければ安全管理が難しくなります。
低すぎれば、凍結の影響が出ます。
そこで、凍結に近い低温を使います。
肉の状態を見ながら熟成させます。
ただし、熟成による変化は製品ごとに異なります。
アミノ酸量は、分析なしに断定できません。

エーデルワイスファームのベーコンの製法
エーデルワイスファームのベーコンの製法は、インジェクションを行わず、マイナス2℃で約4週間漬け込む長期氷温熟成が特徴です。
私たちは、注入式を採用しません。
針で塩漬液を入れることはありません。
代わりに、肉を塩漬液へ浸します。
そして、低温で時間をかけます。
熟成温度はマイナス2℃です。
熟成期間は約4週間です。
効率だけを優先する製法ではありません。
その間、肉の状態を確認します。
肉と脂へ、じっくり味をなじませます。
芳醇な旨味が引き出されます。
脂身のまろやかな口どけも生まれます。
奥行きのある味わいへ仕上げます。
ただし、味の感じ方には個人差があります。
1920年代のドイツに由来する考え方
私たちが大切にする考え方があります。
その源流は、1920年代のドイツです。
効率だけを優先しません。
塩せきに必要な時間も省きません。
手作りの工程を大切にします。
ただし、当時の製法を完全再現したものではありません。
あくまで、伝統的な思想と技術を大切にしています。
ベーコンの製法を完成させる薪炭直火の温燻
長期氷温熟成の後は、2年間自然乾燥させた薪と炭を使います。職人が肉の状態を見ながら火力を調整し、温燻で仕上げます。
燻製は冷燻ではありません。
エーデルワイスファームでは温燻を行います。
薪と炭を使用し、直火でじっくり仕上げます。
薪は2年間自然乾燥させたものです。
職人は肉の状態を確認します。
そのうえで、火力を細かく調整します。
強い煙だけを付ける方法ではありません。
むしろ、やわらかな薪の香りを重ねます。

ベーコンの製法で焼き上がりは変わる
ベーコンの製法によって水分量や保水性が異なると、焼いた際の脂の出方、焼き色、食感にも違いが現れます。
水分が多いベーコンをフライパンで焼くとします。
すると、まず水分が先に出ます。
表面温度が上がりにくくなります。
結果として、焼くより蒸す状態へ近づきます。
一方、水分が少ない製品もあります。
その場合、脂が溶け出しやすくなります。
その脂で、表面を焼きやすくなります。
ただし、仕上がりは厚さにも左右されます。
火力や加熱時間も関係します。
したがって、製法だけで断定はできません。
ベーコンの製法から商品を選ぶポイント
ベーコンの製法は、商品名や見た目だけでは分かりません。熟成期間、注入の有無、原材料、燻煙方法まで確認することが大切です。
具体的な日数が書かれているか
塩漬液を注入するかどうか
保水剤や結着剤の有無
煙の付け方と使用する燃料
賞味期限と開封後の扱い
ただし、原材料が少なければ安全とは限りません。
反対に、添加物があれば危険とも限りません。
それぞれの役割を見ることが大切です。
ベーコンの製法と亜硝酸塩の役割
亜硝酸塩は、後から足された添加物ではありません。ハムやベーコンという食品は、その働きを利用して成立してきました。
ハムやベーコンは、保存食として生まれました。
その保存を支えたのが、岩塩や硝石に含まれる硝酸塩です。
硝酸塩は、肉の中で亜硝酸塩に変わります。
作り手は、その仕組みを知らないまま使っていました。
「この塩を使うと肉が腐りにくく、色もよくなる」という経験知が先にありました。
その正体が亜硝酸塩だと分かったのは、19世紀末以降です。
亜硝酸塩の働きなしには、ハムやベーコンという食品そのものが成立しませんでした。
発色のためだけの添加物ではない
亜硝酸塩には、複数の役割があります。
- ボツリヌス菌の増殖を抑える
- 脂質の酸化による風味の劣化を抑える
- ハム・ベーコン特有の風味をつくる
- 肉の色を安定させる(発色)
このように、発色は役割の一つにすぎません。
食品表示では「発色剤(亜硝酸ナトリウム)」と記載されます。
そのため、見た目のためだけの添加物だと受け取られやすい面があります。
「使わないリスク」も含めて考える
添加物は「入っているか、いないか」ではなく、「なぜ使われているのか」で考えたいものです。
「無添加」は、使うリスクばかりが語られがちです。
でも、本当に考えるべきなのは「使わないリスク」も含めた比較ではないでしょうか。
例えば亜硝酸塩は、健康への懸念だけでなく、食中毒菌の増殖を抑える役割もあります。
いずれにしてもリスクをゼロにすることはできません。
なお、懸念されているのは亜硝酸塩そのものではありません。
条件によって生成しうるニトロソアミンという物質です。
各国が使用量の上限を定めているのは、この生成をできるだけ低く抑えるための仕組みです。
詳しくは無添加ハムと亜硝酸塩の記事で解説しています。
ワインのラベルに「酸化防止剤(亜硫酸塩)」と書かれているのを見たことがあるかもしれません。
亜硫酸塩は、ワインの酸化を防ぎ、雑菌の繁殖を抑えるために、古くから使われてきました。
亜硝酸塩と亜硫酸塩は別の物質ですが、立ち位置はよく似ています。
どちらも、その食品が成立するために伝統的に組み込まれてきた工程の一部です。
エーデルワイスファームの使い方
当ファームでは、亜硝酸塩を必要最小限で使用しています。
保存料は使用していません。
着色料も使用していません。
リン酸塩も使用していません。
したがって、完全無添加とは表現しません。
「保存料不使用」と「無添加」は別のものです。
使用量は法令で定められた基準に従っています。
実際の配合は商品表示を優先してください。
この記事に出てきた用語
ベーコンの製法は専門用語が多い分野です。ここでまとめて確認できます。
塩せきと熟成に関する用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 塩せき | 肉を塩漬けにする工程。塩漬け全般を指します |
| 塩漬液 | 塩せきに使う液体。ピックル液とも呼ばれます |
| タンブリング | 肉を回転させて動かし、塩漬液を早くなじませる工程 |
| 氷温帯 | 0℃から凍り始める温度までの範囲。凍結の手前の温度帯です |
| 温燻 | 30〜80℃で数時間かけて燻す方法。冷燻・熱燻と区別されます |
原材料に関する用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 亜硝酸塩 | 食品添加物。表示上の用途名は「発色剤」。菌の増殖抑制や風味にも関わります |
| リン酸塩 | 保水性を高める目的で使われる添加物。当ファームでは使用していません |
| 保存料 | 微生物の増殖を抑えて保存性を高める添加物。亜硝酸塩とは別の分類です |
※実際の配合は商品表示を優先してください。
ベーコンの製法に関するよくある質問
ベーコンの製法は誤解されやすい分野です。よくある疑問を、塩せきの方法と熟成方法に分けて整理します。
インジェクション製法は水増しですか?
一律に水増しとはいえません。
塩漬液を内部へ届ける技術だからです。
ただし、注入量や配合は製品ごとに異なります。
ウェットキュアとインジェクションは同じですか?
同じではありません。
ウェットキュアは肉を液へ浸す方法です。
インジェクションは、液を注入する方法です。
ドライキュアの方がおいしいですか?
製法だけでは決められません。
原料や熟成期間も味を左右します。
加熱や燻煙方法も重要です。
氷温熟成はベーコンの製法ですか?
氷温熟成は塩せきの方法ではありません。
温度と時間を管理する熟成方法です。
熟成期間が長いほどおいしいですか?
長ければよいとは限りません。
適切な温度管理が必要だからです。
製品に合う期間の設定も重要です。
エーデルワイスファームは何式ですか?
塩漬液へ肉を浸す方式です。
インジェクションは行いません。
マイナス2℃で約4週間熟成します。
エーデルワイスファームは無添加ですか?
完全無添加ではありません。
亜硝酸塩を必要最小限使用します。
保存料や着色料は使用しません。
なぜ亜硝酸塩を使うのですか?
発色のためだけではありません。
ボツリヌス菌の増殖を抑える役割があります。
風味の劣化を抑える働きもあります。
まとめ|ベーコンの製法は時間まで見る
ベーコンの製法には、インジェクション、ドライキュア、ウェットキュアがあります。しかし、製法名だけで味や品質は決まりません。
インジェクションは塩漬液を注入します。
ドライキュアは、塩を直接使います。
ウェットキュアは、塩漬液へ浸します。
このように、それぞれに役割があります。
ただし、それだけでは十分ではありません。
そこに、作り手の考え方が現れます。
エーデルワイスファームは約4週間待ちます。
時間を短縮しないからです。
薪のやわらかな香りが重なります。
肉の弾力も引き出されます。
脂身のまろやかな口どけも生まれます。
ぜひ、ベーコンの製法の違いを食卓でお確かめください。
記事で紹介した商品
参考資料・出典
- Codex Alimentarius:食肉製品の分類
- USDA FSIS:Bacon and Food Safety
- 消費者庁:食品表示制度
- 同 食品衛生基準審査(添加物の指定・規格基準)
- 【当ファーム】薪・炭火仕上げベーコン
- 市販ベーコンとの焼き比べ(当ファーム):記事を見る
- 添加物と安全性の解説(当ファーム):記事を見る
- 作り手としての判断(当ファーム):無添加ハムと亜硝酸塩
