SUMMARY
ハムとベーコンの違いは、燻煙のあとに湯煮(ゆに)または蒸煮(じょうしゃ)をするかどうかにあります。
「ハムとベーコンって、どう違うの?」──一年に数回、必ず聞かれる質問です。
実はこの問い、ネット上でもさまざまな説が飛び交っていますが、正確に理解している人は意外と少ないのです。
「肉の部位が違う」「紐で巻いている」「燻製時間が違う」などの答えをよく耳にします。
けれど、実はどれも本質的な違いではありません。
ベーコンを紐巻きにすることもあれば、ハムでも紐を使わないものもあります。
つまり、分かれ目は燻煙のあとの一手間です。
そこで、この記事では日本農林規格(JAS)の定義をもとに見分け方を整理します。
さらに、生ハムという例外と、味を決める熟成の話まで解説します。
見分け方はひとつ|ハムとベーコンの違いは加熱工程
ハムとベーコンの違いは製造工程(加熱方法)にあります。ハムは燻煙のあとに茹でる(または蒸す)のに対し、ベーコンは茹でない(蒸さない)のです。
まず、どちらも豚肉を塩せき(=肉を塩漬けにする工程)します。
次に、どちらも燻煙します。
つまり、ここまでは同じ工程です。
分かれるのは、そのあとです。
ハムは湯煮または蒸煮という加熱工程へ進みます。
一方、ベーコンはこの工程を持ちません。
したがって、燻煙後に加熱するか否かが最大の見分けポイントです。
ハムとベーコンの違いが生まれる分岐点。※工程の関係をわかりやすくした模式図です
日本農林規格(JAS)の定義で確かめる
なお、この分かれ目は感覚的な話ではありません。日本農林規格(JAS)の定義にも、そのまま書かれています。
ベーコン類の規格では、ベーコンを「豚のばら肉を整形し、塩せきし、及びくん煙したもの」と定めています。
ただし、ここに湯煮・蒸煮は出てきません。
対してロースハムの規格には、「くん煙し、及び湯煮し、若しくは蒸煮したもの」と書かれています。
← 表は横にスクロールできます →
| JAS上の品名 | 主な原料肉 | 燻煙のあとの工程 |
|---|---|---|
| ベーコン | 豚のばら肉 | なし(燻煙して仕上げる) |
| ロースベーコン | 豚のロース肉 | なし(燻煙して仕上げる) |
| ロースハム | 豚のロース肉 | 湯煮または蒸煮 |
| ボンレスハム | 豚のもも肉 | 湯煮または蒸煮 |
| ラックスハム | 肩・ロース・もも肉 | なし(低温で燻煙、または乾燥) |
※農林水産省告示による「ベーコン類の日本農林規格」「ハム類の日本農林規格」をもとに要約しました。詳細な条文は出典をご確認ください。
例外|湯煮しないハムもある
ただし、「ハム=必ず茹でる」と言い切ることはできません。生ハムのように、湯煮も蒸煮もしないハムが存在するからです。
JASのラックスハムは、低温で燻煙するか、燻煙せずに乾燥させたものと定められています。
つまり、いわゆる生ハムがこれにあたります。
また、骨付きハムにも、乾燥だけで仕上げるタイプがあります。
ひとことで言うと
「燻煙のあとに茹でるか」で分かれるのは、加熱タイプのハムとベーコンを比べたときの話です。一方で、生ハムは加熱せず乾燥で仕上げる別のグループだと考えてください。
紐巻き・部位・燻製時間では見分けられない
なお、ハムの「紐巻き」「布巻き」は熟練工の手技です。
力加減ひとつで、しっとりとした舌ざわりにも、しっかりとした食感にも変わります。
機械巻きも存在するため、見た目だけでは判断できません。
見た目では判断できない理由。※違いをわかりやすくした模式図です
ベーコンの工程|熟成と燻煙による旨味づくり
ベーコンには茹で工程がありません。そのため、熟成と燻煙が味の輪郭をつくります。
まず、ベーコンは塩せきした豚肉を低温でじっくり熟成させます。
そのあと、薪と炭で燻煙します。
さらに時間をかけて熟成し、塩の角を取ってまろやかに仕上げます。
茹で工程が無いため、香ばしさと脂の旨味が際立ちます。

ハムとベーコンの違いを生むのは「熟成技術」
美味しさは、原料よりもまず「熟成法」と「職人技」で大きく変わります。そして、塩せきの時間の使い方に作り手の考え方が現れます。
ここでは、熟成のかけ方を3つのタイプに整理します。
なお、塩せきの方法そのもの(注入式・乾塩式・湿塩式)は別の軸の話です。
その詳細は、ベーコンの製法を比較した記事で解説しています。
熟成期間の比較。※期間は一般的な目安で、製品により幅があります
1. 短期塩漬(インジェクション製法)
注射のような針で味付け液を肉に注入し、短時間で味を馴染ませる方法です。
水分を加えて歩留まりを上げる狙いがあり、短時間で仕上げる設計は広く使われています。
ただし、注入そのものを「水増し」と呼ぶのは正確ではありません。
なぜなら、注入量も液の配合も製品ごとに異なるからです。
この点は、製法を比較した記事で詳しく整理しています。
2. 自然塩漬(昔ながらの製法)
かつてのヨーロッパでは、低温で約1週間熟成させる「自然塩漬け」が知られていました。
つまり、添加物に頼らず、肉の酵素と塩の力で旨味を引き出す伝統的な手法です。
3. 長期氷温熟成(エーデルワイスファーム方式)
エーデルワイスファームでは、マイナス2℃の氷温帯で約4週間熟成させます。
これは、凍結の手前の温度で肉の状態を見ながら時間をかける方法です。
その結果、まろやかな口どけと、薪のやわらかな香りが重なります。
ただし、味の感じ方には個人差があります。
OUR METHOD
時間を短縮しない、という選び方。
マイナス2℃
氷温帯での熟成温度
約4週間
塩漬液に浸す期間
10kg → 約6kg
原料肉から完成まで
塩漬液の注入も、タンブリングも行いません。量を増やすのではなく、時間をかけて肉本来の旨味を引き出します。
ハムの種類にも違いがある|加水ハム・保水ハム・ナチュールハム
ハムの側にも、設計思想の違いがあります。そして、水分をどう扱うかが分かれ目です。
スーパーで見かけるハムの多くは、製造効率や食感の均一性を重視した「加水ハム」や「保水ハム」と呼ばれるタイプです。
リン酸塩などの添加物で水分を保持させることで、柔らかさやジューシー感を演出します。
一方で、肉本来の旨味が薄く感じられることもあります。
それに対して、私たちエーデルワイスファームが目指すのは、添加物を極力使わず、熟成と自然の力で旨味を引き出す「ナチュールハム」です。
古来から受け継がれる欧州の伝統製法をベースに、現代の衛生管理のもとで再構築した「自然なハム」の考え方です。
ハムの3タイプ。※一般的な傾向をわかりやすくした模式図です
各タイプの詳しい違いや、ナチュールハムという概念については、こちらで分かりやすく解説しています。
加水ハム・保水ハム・ナチュールハムの違いを詳しく見る
ナチュールハムとは(考え方の解説)
素材も大切。けれど「技術」がすべての基盤
たしかに、豚肉の質は味を左右します。ただし、技術が伴わなければ、その良さは引き出せません。
もちろん、豚肉の質も味を左右します。
ストレスの少ない環境で育った豚や、イベリコ豚・望来豚などの希少種は風味に特徴があります。
けれど、どんなに良い肉でも、熟成・塩せき・燻煙の技術が伴わなければ本当の美味しさは引き出せません。
料理やワイン、チーズづくりと同じく、職人の技が味を決めます。
なお、焼いたときの違いは、水分の扱い方に大きく左右されます。
市販品との比較は、焼き比べの記事にまとめました。
ハムとベーコンを成立させてきた亜硝酸塩の役割
亜硝酸塩は、後から足された添加物ではありません。そして、ハムやベーコンという食品は、その働きを利用して成立してきました。
まず、ハムやベーコンは保存食として生まれました。
そして、その保存を支えたのが岩塩や硝石に含まれる硝酸塩です。
さらに、硝酸塩は肉の中で亜硝酸塩に変わります。
作り手は、その仕組みを知らないまま使っていました。
つまり、「この塩を使うと肉が腐りにくく、色もよくなる」という経験知が先にありました。
そして、正体が亜硝酸塩だと分かったのは19世紀末以降です。
したがって、亜硝酸塩の働きなしには、ハムやベーコンという食品そのものが成立しませんでした。
発色のためだけの添加物ではない
FOUR ROLES
このように、発色は役割の一つにすぎません。
なお、食品表示では「発色剤(亜硝酸ナトリウム)」と記載されます。
そのため、見た目のためだけの添加物だと受け取られやすい面があります。
「使わないリスク」も含めて考える
「無添加」は、使うリスクばかりが語られがちです。
でも、本当に考えるべきなのは「使わないリスク」も含めた比較ではないでしょうか。
例えば亜硝酸塩は、健康への懸念だけでなく、食中毒菌の増殖を抑える役割もあります。
いずれにしてもリスクをゼロにすることはできません。
ひとことで言うと
食品は「入っているか、いないか」ではなく、「なぜ使われているのか」で考えたいものです。
なお、懸念されているのは亜硝酸塩そのものではありません。
むしろ、条件によって生成しうるニトロソアミンという物質です。
そして、各国が使用量の上限を定めているのは、この生成をできるだけ低く抑えるための仕組みです。
詳しくは無添加ハムと亜硝酸塩の記事で解説しています。
当ファームでは、亜硝酸塩を必要最小限で使用しています。
一方、保存料・着色料・リン酸塩は使用していません。
したがって、完全無添加とは表現しません。
つまり、「保存料不使用」と「無添加」は別です。
なお、使用量は法令で定められた基準に従っています。
実際の配合は商品表示を優先してください。
この記事に出てきた用語
ハムとベーコンの話には、日常で使わない言葉が出てきます。そこで、ここでまとめて確認できます。
← 表は横にスクロールできます →
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 塩せき | 肉を塩漬にする工程。JASの条文では「塩漬」と表記されます |
| 塩漬液 | 塩せきに使う液体。塩や砂糖、香辛料を配合します |
| 湯煮・蒸煮 | お湯で煮る、または蒸気で蒸して加熱する工程。ハムの分かれ目です |
| ラックスハム | 低温で燻煙、または乾燥させたハム。いわゆる生ハムがこれにあたります |
| 氷温帯 | 0℃から凍り始める温度までの範囲。凍結の手前の温度帯です |
| リン酸塩 | 保水性を高める目的で使われる添加物。当ファームでは使用していません |
| 亜硝酸塩 | 食品添加物。表示上の用途名は「発色剤」。菌の増殖抑制や風味にも関わります |
※実際の配合は商品表示を優先してください。
ハムとベーコンの違いに関するよくある質問
誤解の多い分野です。そこで、よく聞かれる疑問を7つ整理しました。
ハムとベーコンの違いを一言で言うと何ですか?
燻煙のあとに湯煮または蒸煮をするかどうかです。
つまり、ハムは加熱し、ベーコンは加熱しません。
肉の部位が違うというのは間違いですか?
部位は決め手になりません。
例えば、ロース肉はロースハムにもロースベーコンにもなります。
ただし、ばら肉が多いのはベーコンの傾向にすぎません。
生ハムはハムなのに、なぜ茹でていないのですか?
生ハムは、加熱ではなく乾燥で仕上げるハムだからです。
JASではラックスハムとして、低温で燻煙するか乾燥させたものと定められています。
したがって、加熱するハムとは別のグループだと考えてください。
紐が巻いてあればハムですか?
紐巻きは見分け方になりません。
例えば、ベーコンを紐で巻くこともあります。
反対に、紐を使わないハムもあります。
ベーコンはそのまま食べられますか?
製品によって異なります。
なお、パッケージには「加熱の必要性」の表示があります。
そのため、必ずその表示に従ってお召し上がりください。
エーデルワイスファームのベーコンはどんな製法ですか?
塩漬液へ肉を浸す方式です。
ただし、インジェクションもタンブリングも行いません。
マイナス2℃で約4週間熟成させ、薪と炭による直火の温燻で仕上げます。
ハムとベーコンでは、どちらが塩辛いのですか?
品名だけでは決まりません。
なぜなら、塩分は塩せきの条件と熟成期間で変わるからです。
したがって、正確に知りたい場合は栄養成分表示の食塩相当量をご確認ください。
まとめ|ハムとベーコンの違いは工程にある
ハムとベーコンの違いは、部位でも見た目でもありません。つまり、燻煙のあとに湯煮・蒸煮をするかどうかという工程の違いです。
この分かれ目は、日本農林規格の定義にも書かれています。
ただし、生ハムのように加熱しないハムもあります。
そして、味を決めるのは工程の名前ではなく、熟成にかけた時間と職人の技術です。
CHECK POINTS
CONCLUSION
違いを知ると、選び方が変わります。
エーデルワイスファームのハム・ベーコンは、1933年にハム・ベーコンの製造を本格化して以来、薪燻煙・氷温熟成・手仕事という伝統製法を守り続けています。お中元・お歳暮・内祝いなどの贈り物にも選ばれています。ぜひ、工程の違いを食卓でお確かめください。
記事で紹介した商品・関連ページ
直売店 PiccolaForesta のご案内
直売所・ベーカリー・レストランを併設する「PiccolaForesta(ピッコラフォレスタ)」でも、当社のハム・ベーコンを使ったメニューや焼きたてパンをお楽しみいただけます。
PiccolaForesta 公式サイト
営業時間・アクセスはこちら
お問い合わせ:0120-29-5586(携帯:011-377-6656)
女性スタッフが丁寧にご案内いたします。
参考資料・出典
- 農林水産省:ベーコン類の日本農林規格(PDF)
- 同 ハム類の日本農林規格(PDF)
- Codex Alimentarius:食肉製品の分類
- USDA FSIS:Bacon and Food Safety
- 消費者庁:食品表示制度
- 【当ファーム】ベーコン製造の違い|インジェクション・ドライ・ウェットを比較
- 無添加ハムと亜硝酸塩(当ファーム):記事を見る
