OUR ROOTS ─ 第四章

真空パックを開けた瞬間、耳を疑いました。
1年半以上、白カビに覆われたまま保存していたはずのベーコン節®の試作が、明らかに香り高くなっており、恐る恐る削ってみたら旨みが増していたのです。

ペニシリウム系の白カビが働きかけている間、タンパク質がゆっくり分解され、旨み成分であるアミノ酸が遊離していった結果だと考えられます。狙って作った硬さではなく、時間が思いがけない旨みを連れてきました。

そもそもの始まりは、指宿だった

前章でお話しした指宿での学びのうち、「焙乾」はベーコン節®の燻製工程にすぐに答え合わせができました。もうひとつの技術、「カビ付け」は、まだ手をつけていないこれからの技術だとお伝えしていました。あれから、当ファームでは2024年から定期的にカビ付けのテストを続けています。商品化までは、まだ遠い道のりです。

本枯節のカビ付けには、高い湿度と温度が必要です。しかし、加工場の中でいきなりカビの胞子を空気中に放つわけにはいきません。予算も最小限に抑えたい。そこで行き着いたのが、中古のワインセラーでした。密閉された小さな空間なら、温湿度を管理しながらカビ付けの環境を再現できるのではないか——そう考えたのです。

白カビという選択

本枯節では青カビが使われますが、当ファームが選んだのは、サラミなど西洋の乾燥肉の熟成に使われるペニシリウム系の白カビでした。自然に付いたものではなく、意図的に選定した菌です。

5ヶ月という時間をかけてようやく出来上がったものは、これまでにない硬さになりました。本枯節に匹敵するほどの硬度です。ただ、試食してみると、白カビ特有の穏やかな香りは、思っていたよりインパクトに欠けるものでした。「これでは商品化できない」——そう感じ、今年の春までに何度も配合や条件を調整しましたが、なかなか思うようにいきませんでした。

白カビをまとって硬く仕上がったベーコン節の試作(拡大)
白カビをまとって硬く仕上がったベーコン節の試作

本枯節に匹敵する硬さになった、初期ロットの試作。

脂の多さが、答えを遠ざけた

その後、脂の質にこだわったブランド豚でも試してみましたが、思うようにいきませんでした。脂の多い原料を使うと、カビが内部まで入り込んでしまい、逆に身がスカスカになってしまうことが分かったのです。カビ付けが機能する条件には、原料の脂身の量も関わっている——そう気づかせてくれた失敗でした。

脂が多く内部までカビが入り込みスカスカになった失敗例
脂が多く内部までカビが入り込みスカスカになった失敗例の断面

脂の質にこだわったブランド豚で試したものの、内部までカビが入り込みスカスカになってしまった例。

そして、あの瞬間に戻る

白カビは味が物足りず、ブランド豚では失敗する。八方塞がりに見えたところで、再び青カビでの挑戦を検討していた矢先、初期ロットで白カビに覆われたまま真空パックで保存していたものを、もう一度試食する機会がありました。冒頭でお話しした、あの発見です。1年半以上寝かせたものが、新しい価値を生み出していました。

EPILOGUE

まだ研究の途中で、商品化の道筋も見えていません。それでも、いつか日の目を見る日を夢見て、当ファームの答え合わせは続いています。

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WHO MADE THIS

エーデルワイスファームは、北海道北広島市で薪・炭火仕上げのハム、ベーコン、ベーコン節®を製造しています。

ドイツの伝統的なハムとベーコンを、家族が自分たちで食べるために作り始めて約90年になります。ベーコン節®は、2018年の停電と経営難のさなかに生まれた着想から、その技術を土台に5年をかけて今の形にたどり着きました。

氷温帯熟成
約1ヶ月
焙乾後の追加熟成
3ヶ月以上
仕上がり量
原料の約5分の1
脂を落とし、旨みだけを凝縮
常温での賞味期限
180日
直射日光を避ければ持ち運べる

EVALUATION

1ITI優秀味覚賞 二つ星(2024年)
2DLG(ドイツ農業協会)金賞
3料理王国100選など、出品した国内外の食品コンテストすべてで受賞
41997年から2026年までに、テレビ・新聞・雑誌・ラジオで111件(雑誌・書籍50件、テレビ46件、新聞10件、ラジオ5件)

受賞実績を見るメディア掲載111件を見る

ハムやベーコンは、古くから岩塩を使って作られてきた保存食です。私たちは「完全無添加」とは表現しません。岩塩に含まれる硝酸塩からできる亜硝酸塩を、ボツリヌス菌を防ぐため必要最小限だけ使用し、保存料・着色料・リン酸塩は使用していません。詳しくはこちら

FOR THIS STORY

カビ付けの答えはまだ出ていませんが、今すでにお楽しみいただけるベーコン節®は、小瓶12gからお試しいただけます。

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